今を去ること40年以上前。大阪で万国博覧会が開かれました。岡本太郎さんの先鋭的なシンボルが飾られ、私は「なんじゃありゃ」と思いつつ関心を持ってみていました。
そんなときたまたま父親のつてで博覧会場に行くことが出来るようになりました。
博覧会場では当時としては珍しい電気自動車が走りまわり、今では当たり前になっている当時としては画期的な360度映画や立体映画が上映されていました。
当時高校生ぐらいだったと思いますが、たまたま訪れた日はあいにくの雨模様。しかも激しい雷雨。それでも多数の人がパビリオンに入場するため列を作り、また移動のために傘をさして歩いていました。
私も家族と妹と共にその列に並ぶために、高さ20mぐらいのビルの下を歩いていました。結構高い建物なので、屋上付近には避雷針が設置されていたようです。
あたりはどしゃ降りの雨。その中を稲光が光っています。この雷雨は凄いな。どこかに落ちているかもなんてことを暢気に思っていた瞬間、頭上の避雷針に落雷。
避雷針は落雷を避けるものである、ということは知っていましたが、実際の機能は、そこに雷を落とし、周囲への落雷の被害を減らすためのものである、という事までは考えていませんでした。
落雷とは具体的にどういうものか。当然ながら周囲にも多数の人が歩いていました。雷雨が激しいと思っていた人も大勢いたと思いますが、まさか自分の頭上に雷が落ちると予想していた人はいなかったと思います。
落雷した瞬間の衝撃を言葉で表すことは難しいです。通常の落雷で近くに落ちると、光った瞬間に「ゴロゴロ」ではなく「ガシャーン」とか「バシャ」「バリバリ」というような擬音で落ちるような気がします。
しかしこの時の音は、擬音では表せません。あえて言うなら空の上から激しい音の塊が頭の上に叩きつけられる感じと言えばいいのでしょうか。
地面にはいつくばらせるような衝撃を感じました。実際その衝撃で付近を歩いていた大半の人が、思わず「うわ〜」と言うような声を上げしゃがみ込みました。
私はなぜか、「うわ落雷だ〜」と思いつつも、しゃがまずに周囲を見回していました。すると目の前360度に一瞬ですが見たことのない光景が広がりました。
先ず空気全体が紫色に染まります。次に、その中を避雷針が吸収しきれなかったと思われる放電の残りが、まるで線香花火のように、頭上から降り注いでくるのが見えました。火花のシャワーと言えるかもしれません。
その後、空中からは鉄のような金属臭がしました。今、振り返ってみるとあれはオゾンの臭いだったと思います。
落雷の怖さを身を持って感じることの出来た、後にも先にも唯一の体験ですが、一歩間違えば多数の人が落雷で命を落としていたと思われます。
ついでながら避雷針というのは、本来的にはそこに雷を導くものですから、私は導雷針だと思っています。