私の実験ポリシー

 近年理科離れが進み、その衰退に有識者が驚いたのか、最近になってようやく再び理数科復活の兆しが見えてきました。

 この間教育課程が変わるたびに理科の必修単位数は減少を続け、理系の大学に進んでいながら理科は4科目中1科目しか選択していなかった学生が続出しました。

 一方教員側は理科離れを何とか食い止めるべく、通常の講義形式ではなく様々な具体例や実験を取り入れ、なんとか興味関心を引き出そうと努力してきました。その努力とインターネットの普及もあり、最近では全国で様々な実験が日々試みられています。

 しかし一方で、興味を引くためだけの大道芸的な要素を含んだ、いわゆる一発芸のような実験も増えてきました。

 確かに瞬間的に音が出たり、光を発したり、くっついたり離れたり浮かんだりするのは見ていて面白いと思います。しかしそれで論理的な思考を養えるのかというと疑問に思えてしまいます。

 やはり単純なことでも、自分の手足、体を使って体験することにより、何故、どうしてという疑問が生まれてくるのだと思います。その意味では昔から存在する教科書的な実験も捨て難いと思います。

 そんなこんなで、最近は生徒が測定器や複雑な実験の機械を使うことなく、自分で簡単に行える実験を模索する事が多くなりました。

 ここに掲載している実験事例は、インターネットや各種の実験書を参考にしながら、それを自分なりに若干味付けして実際に試みてきたものです。面白いもの、つまらないもの、受けが良いもの悪いもの、役に立ったもの立たなかったもの、失敗したもの、玉石混交です。

 ちなみに特別な道具や大がかりな機械を使うような実験は極力避けています。理科は身近にある現象を理解する科目ですから、なるべく身近な道具を使いたいと考えています。

 また物理化学生物地学という分野分けもあまり意識していません。すべての科目が相互に関連しあうと考えています。

 例えば堆積岩を割って化石を取り出す、という実験も、堆積や化石という観点からは地学ですが、堆積岩の組成に視点を移せば化学として扱って良いでしょうし、圧力という点なら物理かもしれません。化石化したものは何かと考えれば生物です。

 実際に実験を行うにあたっては、特に以下のことに注意しています。

・ 生徒の安全面に気を配ること

・ 結果だけにとらわれない

・ 実験が失敗した場合は、失敗理由を考えさせる

・ 実験が失敗した責任は教員側にある。生徒にはない

・ 説明は出来るだけ丁寧に行うが、生徒が工夫できる余地も残しておく。(何から何まで思い通りにしょうとは思わない)

・ 方法の説明はなるべく絵を描いて具体的に行う(口頭だけの説明は避ける)

・ 実験道具の破損は間違いなく起こる。故意でない限り生徒を責めない

・ 実習助手がいる場合は、やり方について十分に打ち合わせをするか、やりやすい方法を事前に検討する

・ 出来るかぎり予備実験を行う

・ 実験プリントは自分でオリジナルなものを作成する

  

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