放射線の影響


 悪性リンパ腫にしろ、通常のガンにしろ、放射線の影響を一度は考えておかないといけないと思っています。放射線の被ばく量については福島原発事故がきっかけとなり、日本人全体の放射線に関する知識量が増えたのではないかなと思っています。

 ここであらためてクドクド書くのもどうかと思うので、簡単にまとめておきたいと思います。先ず放射線の正体ですが、基本的にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線の4種類になると思います。

 アルファ線は一般的にヘリウムという元素の原子核に等しいという説明になりますが、陽子2個と中性子2個のごく小さな塊です。ベータ線は電子です。

 ちなみにすべての物質は原子で出来ていますが、この構造は中心に原子核というひじょうに小さな塊があり、その周辺に電子が散らばって存在しているイメージです。陽子や中性子は、いくつか集まって原子核を構成しますので、アルファ線は原子の中心部だけが飛んでくることになります。

 ベータ線は原子の周囲に存在していた電子が、原子の束縛を振り切って飛んでくるイメージです。

 ただこの二つの粒子は、空気中ですぐに減衰しますので、基本的に原発や病院の放射線区画で働いている人以外の一般の人は気にする必要はないと思います。

 残りのガンマ線とエックス線ですが、原発事故ではこのガンマ線が問題になり、医療現場でレントゲンを撮影するときはエックス線が問題になります。

 これらの正体ですが、基本的に波長が短く、振動数の大きい電波だと思って構いません。ラジオやテレビ、携帯電話でも電波が使われていますが、これらの電波よりもかなり波長が短く、振動数が大きい電波です。

 電波の性質ですが、基本的に振動数が大きくなると、その電波自体のエネルギーも大きくなります。従って電波がぶつかると、ぶつかった物体に影響を与える効果も大きくなります。例えば電子レンジ等はそういった性質を利用して、食べ物を温めています。

 エックス線、ガンマ線はガンマ線の方が波長が短く、振動数が大きいので持っているエネルギーも大きくなります。これらの電波(放射線)は骨等にぶつかると、そこで一部が遮られるので、その性質を利用して、いわゆるレントゲン撮影が行われています。

 しかし遮られると言うことは、そこで何らかの相互作用があったから遮られるわけです。その相互作用がどこで行われ、どのような作用であったかが問題になるわけです。

 つまり例えば皮膚の細胞の細胞膜の一部にガンマ線がぶつかり、その表面を傷つけたとしても、通常はすぐに修復されてしまうと言うことです。

 ところが、たまたまこれが骨髄の中を通過し、その通過途中にたまたま細胞分裂中のリンパ球があり、さらにたまたまこのリンパ球の染色体の中のどこかに影響を及ぼし、遺伝子の配列が変わってしまうという可能性も否定できないわけです。

 その配列が変わってしまう遺伝子が、さらにたまたま増殖を抑制する遺伝子だったとすると、そのリンパ球は増殖を抑制できなくなり、一方的に増殖してしまう可能性があると言うことです。

 ただこれはあくまで可能性であって、通常の生活をしている分にはまったく気にする必要はないはずです。(でないと誰もが放射線由来のガンになってしまいます)

 ただし可能性というのは確率の問題で、例えば宝くじを1枚買って1億円があたる確率もあれば、1万枚買ってもあたらない場合もあるわけです。(当然1万枚買った方があたる確率は高いはずですが)

 これを放射線被ばくに置き換えると、たまたま低濃度の放射線に被曝したとき、本当にわずかな確率ですが、遺伝子の変異が起こる可能性も否定できません。

 当然その被ばく量が増えれば増えるほど、変異が起こる確率は高くなります。そのため放射線の線量を気にして、被ばく量は少ない方が良いという結論になります。

 また忘れてはいけないことですが、日常的に宇宙や大地、さらに食物からわずかな放射線を浴びて我々は暮らしています。(自然放射線と言います)

 これらに寄って体が影響を受ける可能性も否定できませんが、普通は免疫機能のはたらきによって修復されます。ただし、加齢と共に免疫機能が衰えれば、修復機能も衰えますから、放射線による遺伝子の変異があったとき、対応できる確率が減少します。

 従って悪性リンパ腫についても、上記の考えにより、放射線の影響を完全に否定することはできないという結論になります。


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