PET 陽電子放射断層撮影

 PETとは「Positron Emission Tomography」という英語の頭文字をとった検査方法です。「Positron」は陽電子をあらわし、「Emission」は放射、「Tomography」は断層写真撮影を意味する英単語です。

 ガンを検査する場合、レントゲンやCTはそれなりの効果を発揮しますが、これは要するに外部からX線を照射して、それが組織に遮蔽されるときに出来る影を見て、腫瘍の有無を判断することになります。

 従って、変な言い方ですが、ある程度腫瘍組織が成長していないと、ガンの有無を判定できないことになります。

 それに対してPETは、ガン細胞が出来て増殖を始めると、その成長のために周囲の通常細胞よりもより多くの栄養素を必要とするので、この栄養素の取り込み量でガンの有無を判定します。

 つまり細胞組織に与える栄養分の中に、特定の目印を付けたものを紛れ込ませ、それが周囲に比べて多量に取りこまれた部位が存在したら、それが腫瘍の可能性があるという判断をするわけです。

 ではどうやって目印をつけるかですが、ガン組織が取りこむブドウ糖の中に放射性元素を紛れ込ませます。ある意味体内被曝と言われる状態になるわけですが、その線量はひじょうに小さく、また半減期も短く、さらにすぐに腎臓から排出されるような物質を使います。

 要するに体の中に発光する薬剤を入れて、その発光体が体のどの部分に集まるかを見て、その集まった場所にガンが存在すると推定するわけです。

 大変素晴らしい効果のあるPET検査ですが、平成22年3月までは保険診療が適用できず、これを利用できるのはある程度お金を持っている限られた人でした。だいたい1回の検査が10万円と考えればよいと思います。

 しかしこの年の4月以降は保険診療が適用となり、誰もが必要に応じて検査が出来るようになっています。とはいうものの、元が10万円ですから、3割負担の患者さんなら3万円となり、これまた大きな金額です。

 ただし高額療養費制度がありますので、一ヶ月に支払わなければならない医療に限度額は所得によって決まっていますし、何回も受けるような検査ではありませんので、対費用効果を考えると、現状でやむを得ないのかなと思います。

 なお、自分自身の健康診断の一貫としてこの検査を受けようとすると、保険診療にはなりませんので、10万円前後が必要になります。

 またこの検査をするためには、ある程度大きな設備が必要ですから、検査を行える病院は限られています。これについては、患者さんや家族が独自に調べるしかないような気がします。


表紙に戻る 尿検査、血液検査 超音波検査