尿中のカルシウム量

 カルシウムは人体の中に存在する無機物質の中でもっとも多い元素です。人体を構成する成分元素の中で一番多いのが炭素、次が酸素、窒素、水素の順になっていて、これらは有機物に分類されています。

 で、その次がカルシウムで、これは無機物質に分類されています。有機、無機の分類は、以前は生物に関係する物質を有機物、関係しないものを無機物としていましたが、生体内にも無機物が存在することが分かり、現在は炭素を主体とする化合物を有機物としています。

 カルシウムは化学の分野ではアルカリ土類金属という種類に属し、様々な化合物が存在し我々の生活に役立っています。また人体中ではリン酸カルシウムCa3(PO4)2として、硬い骨や歯の成分となっています。

 従って成長期には大量のカルシウムが必要になり、食べ物でどんどんカルシウムを補ってやる必要が生じます。そこで通常は牛乳等の乳製品や小魚と言った食品を食べるように勧めるわけです。(もちろん野菜にも含まれています)

 次にこの骨ですが、当然成長期はもちろん、成人になっても、骨自体は骨を作る骨芽細胞によって成長しています。骨折が自然治癒するのはそのためです。

 一方古くなった骨を壊す細胞もあり、これを破骨細胞と呼んでいます。骨芽細胞が新しい骨を作り、破骨細胞が古い骨を壊すことによって、徐々に骨が成長していくわけですが、この成長速度というか、作る方と壊す方の速度は、当然作る方が若干多くなっています。

 またカルシウムは骨以外の筋肉や血液中にも存在し、体はこの血液中のカルシウム量を感知し、一定の値になるよう調節しています。

 この調節の主役は副甲状腺が担当していて、これはのど仏の周囲にある甲状腺の周りに存在しています。ここからホルモンが分泌されるのですが、その分泌は血液中のカルシウム不足によって引き起こされます。

 ではどこからカルシウムを持ってくるかというと、これは破骨細胞のはたらきによるものです。

 つまり副甲状腺ホルモンは

血液中のカルシウムが少ない ホルモン増加 破骨細胞のはたらきを増加 血液中のカルシウム増加
血液中のカルシウムが多い ホルモン減少 破骨細胞のはたらきを減少 血液中のカルシウム減少


という調節を行っています。また血液中に余分になったカルシウムは尿から排出されます。これらのはたらきが正常に行われなくなり、必要以上に骨の中からカルシウムが抜け出てしまったものが「骨粗鬆症」と言われているものです。

 問題は悪性リンパ腫との関係ですが、我が家の連れもそうだったのですが、悪性腫瘍等があると「高カルシウム血症」(血液中のカルシウム量が異常に多くなる)という病態を示すことが多いようです。

 原因はがんが発生すると、増殖に伴って上記の副甲状腺ホルモンと似たような物質を多量に分泌するようで、そうなると骨がどんどん破骨細胞によって壊され、血液中のカルシウム量が増加するため、尿中のカルシウムも増加する事になるようです。

 我が家の連れは当初高カルシウム血症の特徴である「喉が渇く」「水を多量に飲む」「体がだるい」「トイレへの回数が多い」「食欲がない」「動きが鈍い」「意識が明晰でない」「力が出ない」等の症状があり、これにより医者に行き、カルシウム値が高いので、腎臓に問題がありそうだと言われ、大きな病院で精密検査を受けることになりました。

 しかし精密検査を受けた段階で、高カルシウム血症が明らかになり、担当医はこれによって腫瘍の存在を疑い始めたのだと思います。

 ちなみに血液中にカルシウムが異常に多くなったため、それを薄めようとして水が必要になり喉が渇きます。その結果大量の水を飲むのでトイレに行く回数が増えるということになります。 


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