悪性リンパ腫の切除手術は可能か

 悪性リンパ腫の主たる症状は首のリンパ腺の腫れであることが分かっていますが、この部分を通常のガンと同じように切除したとしたら、治るのだろうかという疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

 しかし一般的には患部の一部を切り取って生検を行うことはあっても切除手術は行われません。これは何故なのか?

 当然ながら例えば首のリンパ節が腫れていれば、そこでリンパ腫細胞が増殖していることが明らかなわけで、それを切除してしまえば治るような気もします。

 ところが確かにそのリンパ節で異常な増殖を繰り返していた細胞は切除によってなくすことが出来ますが、その該当リンパ腫細胞を作っているのは骨髄です。

 つまり造血幹細胞が骨髄で分化し、リンパ球となるどこかの過程で染色体に異常が起き、そのリンパ球が血液やリンパ管を流れ、リンパ節に到着し、そこで増殖を始めるというのがこれまでまとめてきた内容です。

 従って最後に到着するリンパ節を切除しても、血液中には問題のある異常なリンパ腫細胞が以前として残存し、それはまた別のリンパ節で増殖する可能性があります。

 と言うことは、異常な増殖をするリンパ腫細胞を作り出した部分を切除できれば別ですが、結果として生じたリンパ節が腫れた部分を切除しても治らないという結論になります。

 こういったことを考えると、逆に、では悪性リンパ腫の治療はどうあるべきか、ということも分かってきます。悪性リンパ腫細胞は全身に分布しているわけですから、それを叩くためには全身を対象にしなければならず、そのために血液中に薬物を入れ全身に行き渡らせる抗ガン剤治療が行われるわけです。

 しかしこの方法は全身に分布している悪性リンパ腫を対象に出来ますが、その根本を治したわけではありません。つまり出来てしまった悪性リンパ腫細胞を破壊するという方法です。(抗ガン剤は骨髄にも浸透し、その根元部分を破壊することもありますので、抗ガン剤だけで治療が完結することもありえます)

 この方法に特化して、特定のリンパ腫細胞だけを攻撃するのが分子標的薬のリツキサンですが、これはまた別の場所で説明したいと思います。

 上記の方法は、悪性リンパ腫がまだ初期段階である場合は有効なようですが、こういった悪性リンパ腫細胞を生産している生産拠点をすべて破壊するわけではありません。(もしすべて破壊してしまったら正常な造血機能も失われます。強い抗ガン剤治療ではこういった副作用も現れます。我が家の連れがそうでした)

 結局骨髄をすべて破壊するわけにはいかず、そのために血液そのものを根源的に見直して、悪性リンパ腫細胞が存在していない血液に取り替えるという方法が考えられます。これが造血幹細胞移植という方法です。

 この方法にも二種類あって、一つは自分自身の正常な造血幹細胞を取り出して移植するもの、もう一つは他人の造血幹細胞を移植する方法です。これも別のページで説明したいと思います 

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