何クールやるのがベストなのか

 前ページで、自己の免疫系まで破壊してしまうような必要以上のクール数は避けなければいけない、と書きましたが、書きながら、では必要以上のクール数をどこで判断するのだろうか、という疑問が生じるなと感じました。

 基本的に化学療法は、その治療を行いながら毎日のように採血が行われ(我が家の連れの場合は少なくとも数日毎でした。それを見るだけでも痛々しく感じました)、その結果もきちんと公表してくれる病院が多いと思います。

 しかしその結果に血球数等の変化は書いてありましたが、悪性リンパ腫細胞の数は書かれていませんので、治療の効果が上がっているかどうかは、あくまで他の数値から類推するしかないようです。

 腫瘍マーカーというのがあって、これは目安にはなるようですが、それが100%リンパ腫細胞の増減を表す数値なのかというと、そうでもないようで、他の要因によって結構変動がある、というような言い方を我が家の主治医はしていました。

 ということは、残存細胞が今現在どのくらいあるのか、ということは、例えば腫れが引いてきたとか、白血球数が著しく減少したとか、LDHやCRPの値が下がったというような傾向から類推するしかなく、最後は患部と思われる部分を生検(切り取って検査)で確かめるしかないわけです。

 しかし生検は、一般的には治療の最後に行われることが多いので、途中で治療を中断する根拠にはなりません。

 また途中でやめた場合、当初予想していた以上の数の残存細胞があり、それによって免疫があったとしても、その免疫力を上回り再発する、ということも予想されますので、患者側としても、迂闊に「もうこれで充分です」と主治医に伝えるのは勇気がいりますし、理論的根拠もあやふやになってしまうと思います。

 ということは結局医療側の言う回数を素直に受けるしかないのかな、という気にもなりますが、自分の体調を一番よく知っているのは患者自身ですから、「これ以上は危ない」と感じたら、素直にそれを伝えても良いのではないかと思います。

 実際問題、それが例え早すぎる段階であっても、医師側に「途中でやめる意志があるんだ」という気持ちを患者側は持っているんだという認識を持たせることが出来ると思います。

 ということで、以下我が家の連れの例ですが、もし途中で中断するなら、これが一つの目安になるのではないかと思っています。

 それは、骨髄抑制によって白血球が破壊されたあとの回復期間です。強い治療をすると骨髄抑制が強くなり、白血球が著しく減少します。しかし当初は何もしなくても、すぐにどんどん自然回復します。

 ところが治療を繰り返す内にこの快復力が徐々に弱くなってきますので、病院によってはここでG-CSFという薬剤(白血球増加刺激剤)を使います。これも最初の内は、使うとすぐに白血球が増加し始め、場合によっては一時的に正常量の2倍とか3倍の量になります。

 しかし、これにもやはり限界があるようで、何回もクールを繰り返すと、やがてG-CSFを利用しても白血球があまり増加せず、躍起になって更に増やそうとすると、血液内にまだ未分化の血球(芽球、骨髄球、棹状核球、分節核球というような名前の血球です)が出てきます。

 また赤血球や血小板も容易に回復せず、輸血に頼るしかないような状態になります。こうなると白血球は増加せず、免疫系もずたずたになっている証拠だと私は思いますので、治療の中止を早い段階で考慮した方が良いように思います。

 それでも、中止するとまだリンパ腫細胞が残っているのではという不安は残ります。しかしリンパ系がずたずたになるような治療ならば、リンパ球はほぼ全滅しているはずで、基本的にはリンパ腫細胞もほとんどなくなっているはずです。
 
 それでも再びリンパ腫細胞が勢いを増す場合は、それは要するにそれまで行ってきた抗ガン剤の治療が、その悪性リンパ腫細胞に対してうまく効いていない証拠ですから、それでもクールを繰り返せば副作用で体力だけが消耗します。

 また免疫系がずたずたになってしまえば、リンパ腫の残存細胞が残っていてもそれを駆逐する力が体の中にないので、再発の可能性も高くなると思います。

 ただこの辺りの記述は、医療現場のかなり微妙な部分に触れていると思われますので、簡単に判断はできないはずです。

 しかし私は、患者側が黙って副作用を耐えて、医師の指示に従うだけと言う状態は避けた方がよいように思っていますので、あえてこのページを本音で書きました。(もしかすると若干医療不信があるのかもしれません)


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