1回目の抗ガン効果が高い

 結局引き算かかけ算になるかはよく分かりませんが、抗ガン剤によって悪性リンパ腫細胞は次々と駆逐されるものの、抗ガン剤の効果が徐々に低くなれば、よほど抗ガン剤の効果が高くないかぎり、リンパ腫細胞は必ず残ってしまうという結論になります。

 その中で、1回目のクールは抗ガン効果がひじょうに大きくなる、と言う根拠ですが、我が家の連れに対する主治医の説明で、こういった話がありました。

 「抗ガン剤を入れると、第1回目がひじょうによく反応します。時には反応しすぎて、リンパ腫細胞が雪崩をうって壊滅する(腫瘍崩壊症候群と呼ぶようです)ので、それが血液中を流れ、腎臓に大きな負担をかける場合があります。

 このとき腎臓が弱っていると、場合によっては透析等が必要になる可能性があります。今回の治療では、抗ガン剤投与の直前に透析の準備も行って治療を始めることになります」

 という言い方でした。この時は病気に対する知識はまったくなかったため、「強い治療をしないと治らない。その場合透析せざるを得ないような事態も起こりえるんだ」というようにしか解釈できませんでした。

 結果的には透析という事態には至りませんでしたが、最初の投与時の病院側の緊張感というものがヒシヒシと伝わってきて、これは大変な治療を行うんだな、と強く印象に残っています。

 さてそうゆうわけで、第1回目のクールは大変大きな効果を上げるというのが一般的な解釈のようです。しかし抗ガン剤は細胞分裂時に効果を発揮する、という抗ガン剤そのものの作用機序をかんがえると、1回目だけが強調されることと矛盾しているように思われます。

 病院側は、「抗ガン剤は細胞分裂時に働くので、そのタイミングに合わせて何回か治療を繰り返さないといけません」、と言いながら、もう片方で「1回目は大きな効果を及ぼすので、細心の注意が必要です。2回目以降は効果が減少します」と言います。

 こうゆう話を今になってきちんと論理的に考えてみると、両者は明らかに矛盾しています。ということは、抗ガン剤治療というのは、実はやってみないと分からないという側面が強いのではないかと思えます。

 たまたまこれまで積み上げた治療方法ではCHOP療法の成績が良く、また副作用も少ないと言うことが分かっているようですが、何故そうなのかは本質的なことは分かっていない、と言うことだと思います。

 ただ分からなくても、標準治療を行えばかなりの確率で生存期間が延び、また寛解や再発に至らない人もいる、という実績があるため、医療現場では「これが一番効果があります」ということでCHOP療法を勧める、ということになるのかなと感じています。

 というわけで、ここ何回か、同じようなことばかり書いているなという気もしますが、要するに標準治療は標準治療であって、その患者さんに最も適した治療ではないかもしれないと言う可能性と、標準治療だから○回クールをやらなければ治らない、ということではないような気がしている、ということです。

 しかし専門家である医者が、6回やってください、と言ったとき、「いえ、私は4回で結構です」とか、実際に自分の体調や副作用の状況を見て、「もうこれ以上は出来ません」と断ることはひじょうに勇気がいります。

 途中でやめたら、まだ残存細胞が一杯あるのではとか、医師から嫌われて治療がいい加減になるのではとか、すぐに退院しろと言われるのではとか、やはり再発の可能性が高いだろうなとか、不安は尽きないと思います。

 とはいうものの、何回繰り返しても残存細胞は存在する、ということと、その残りを一掃するのは最後は自分自身の免疫力を初めとする体力であると考えると、やはり何回行うかという判断は、医師団だけに任せるのではなく、患者さん側も真剣に考えるテーマではないのかなという気がします。


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