リツキサンについて

 同じようなことを言い続けてここまで来ましたので、少し先へ進みます。リツキサンです。私の連れが悪性リンパ腫と言われ、基本的なクール数をなんとかこなしたあと、主治医から「寛解」状態になったという嬉しい話を聞きました。
 
 ただ「寛解状態になっても、顕微鏡等では検出されないリンパ腫細胞が残っている可能性が高いので、定期的にリツキサンを投与したいと思います」とのことで、退院後リツキサンの単独投与が始まりました。

 このリツキサンについてはすでに抗ガン剤の化学療法を行っているときに、同時に投与を行っていたため抵抗は特に感じませんでしたが、最初の投与時は、かなりものものしい雰囲気でした。

 一般的には最初の投与時に若干の副作用を生じることがありますが、それを乗り切れば以後の副作用はほとんどないというふうに説明書きがある不思議な薬剤ですが、上に書いたように初回だけは若干の副作用という言葉以上の物々しさを感じました。

 ただ、実際には確かにこの薬剤による副作用らしきものはほとんどありませんでした。他の抗ガン剤による副作用が大きかったため、リツキサンによる副作用を感じなかったとも言えるかもしれません。

 さてそこであらためてこのリツキサンという薬剤について、その特徴をまとめておきたいと思います。

 先ず名前ですが、一般的にはリツキサンと言われていますが、これは商品名で、実際の名称は「リツキシマブ」と言います。全薬工業、中外製薬から発売され、その価格は発売当時21万円という高価な物でした。

 要するにこの薬剤を作る方法が、ヒトや動物の細胞に細工をするのですが、遺伝子工学的な要素も含んでいるようで、ひじょうに作るのが難しいという事だと思います。

 従って発売当初は保険適用がなかったため、患者さんはこの薬を使う度に上記の料金を全額支払わなくてはならず、大変な金銭的負担を強いられました。

 しかし現在は保険適用となっていますので、普通は3分の1負担となります。それでも充分高いじゃないかと思えますが、高額療養費制度もあるため、それを併用することによって、その他の抗ガン剤治療や検査費用を含めても、我が家の一ヶ月の負担は高額療養費の上限である10万円弱だったと思います。

 予断ですが、当時たまたまほんの少しだけ医療保険に入っていたため、一ヶ月10万と言いながら、医療保険の請求により、かなり負担が軽減されました。(それでも2年近い入院生活では、総額として大きな出費を強いられました。しかし命には代えられない、というのが患者家族の思いであるはずです)

 で最大の特徴は、ヒトのリンパ球のB細胞表面にある特別なタンパク質の構造(CD20と呼んでいるようです)を認識し、その部分にこの薬剤が結合し、その細胞を破壊するという機能を持っているということです。

 つまり通常の抗ガン剤のように、細胞分裂中の細胞ならどんなものにでも作用して破壊してしまうというのではなく、相手を識別する能力を持っているということで、この薬剤が大活躍すれば、それこそ自分の免疫に頼らなくても再発は起きないということになるわけです。


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