リツキサン投与でも治らない時の原因は


 リツキサンはBリンパ球が表面に持っている特別なタンパク質(CD20と言うそうですが)の構造を見分けて、その部分に結合し、そのリンパ球を無毒化する、というのが最大の特徴です。

 前回も書きましたが、通常の抗ガン剤が細胞分裂時の細胞すべてを対象として破壊するのに対して、Bリンパ球だけが対象になるため、体への負担が少ない(副作用が小さい)ということになります。

 そこでこのリツキサンを単独で使用したり、CHOP療法と併せて使用したりするわけですが、CHOP療法の場合はリツキサンを併用した方が生存率が高い、というグラフもよく見かけます。

 生存率のグラフについてもいずれ勉強しなくてはいけないと考えていますが、今はちょっとそれは置いておいて、私が疑問に思える事を一つ書きます。

 それは、もしリツキサンという薬剤がCD20というタンパク質を完璧に識別し、その部分にきっちり結合して、それらの細胞をすべて無毒化することが出来るなら、基本的には誰もがB細胞に由来する悪性リンパ腫の病気から解放され、全員が完全寛解に至るはずです。

 しかし実際には我が家の連れの場合もそうですが、一度寛解状態になったにも関わらず、およそ半年で再発しています。つまり、それほど理想的な薬剤であるに関わらず、何故100%寛解に至らないのか、ということが気になります。

 ネットでの情報では、上記の理由により、リツキサンは悪性リンパ腫に対して大きな効果を発揮すると書かれていますが、それによって全員が完全寛解するとは書かれておらず、また再発する理由について考察している文書も見あたりませんでした。

 もちろん再発する理由の一つとして、リツキサンの投与量が足りなかったと言うようなことも考えられますが、1回目の投与を除いて副作用が少ない薬ですから、病院側もその病態に見合った量を投与しているはずです。

 では何故再発するのか、もしくは何故完全寛解に至らない人が出るのか。

 そこで改めてリツキサンが作用するCD20について調べてみると、ウィキペディアに「ヒトCD20はヒトB細胞のみに発現し、正常・腫瘍細胞は問わず、preB〜成熟Bにかけて細胞膜表面に認められる。preB、形質細胞はみられない。」という一文が載っています。

 この中のpreBとは、B細胞になる前の細胞のことで、また形質細胞とは、B細胞がさらに成熟した細胞だと言うことです。つまりB細胞になる前段階の細胞と、B細胞になった後の細胞はCD20を持っていないということであり、もしこの解釈が正しければ、これらの細胞がリンパ腫細胞の源であった場合、いくらリツキサンを投与しても、この悪性リンパ腫は完全寛解にならないし、再発する可能性がある、ということです。

 我が家の連れの悪性リンパ腫が、一体どこから発生したのかということは最後の最後まで分かりませんでしたが、かなり質が悪い、骨髄あたりではないかという言い方を主治医がチラッとしたことがあります。

 ほんの一瞬ですから今となっては記憶も曖昧なのですが、ひじょうに強い化学療法を行って、いったん寛解に至り、さらにその後リツキサンを単独投与していたにもかかわらず再発をしてしまったということは、もしかしたら我が家の連れの悪性リンパ腫は、B細胞になる前の骨髄あたりで発生したのではないかという疑いを消すことが出来ません。

 そしてそういった悪性リンパ腫の場合は、治療がひじょうに難しい、という事にもなりそうです。


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