生存曲線とは

 抗ガン剤の治療による治療で、第一目標にしなくてはいけないのはリンパ腫細胞の縮小または消滅だと思います。そしてその結果リンパ腫細胞の増殖に起因する不快な身体症状が消失し、再発もせず、結果的に生存期間が無治療であった場合より伸びることが目標になるのではないかと前ページにまとめました。

 そこでこの目標に到達するための分かりやすい指標は何かと言うことになるわけですが、やはりこの病気になって誰もが気になるのは、リンパ腫細胞の増殖か副作用による体力の減退か、理由はともかくとして、自分の命がどうなるのか、と言うことだと思います。

 従って化学療法の効果を表すための客観的な指標として第一に考えられるのは、過去に同じような病気だった人が同じような治療を受けた結果、生存期間はどうなったかということです。これは当然医療側も指標として気にしているはずですが、これを生存曲線と呼んでいます。

 しかしこの生存曲線のグラフは、患者が見るにはあまりに露骨すぎるので、治療中の患者さん本人は見せてもらえないことが多いかもしれません。

 ただしネット上では、各療法について標準的なCHOP療法と比較するようなグラフをが作られていて、比較的簡単に検索で見つけることができます。有名なのはCHOP療法とR-CHOP療法を比較したグラフだと思います。

 ただこういったグラフも、治療を行った場合と無治療だった場合の比較のグラフは示されていません。無治療を選択する患者さんが少ないのかもしれませんが、私には理由はよく分かりません。

 というわけでグラフの見方の話になるわけですが、一般的にグラフの横軸は時間、縦軸は人数または全体の人数に対するパーセントで示されています。

 グラフの最初すなわち横軸の時間で0時間の時、治療が開始されます。このときその治療を受けた患者さんが1000人いた場合、このグラフの縦軸の出発点は1000人または100%と言う数字から始まるわけです。

 その後治療が進むにつれ、何らかの理由で(病気の進行、骨髄抑制による感染症、副作用による体力低下、その他の一般的な病気や事故?)亡くなる方がいるので、治療を継続できる患者さんは減少していきます。

 その結果、時間と共に治療する人数が少しずつ減少していきますから、グラフ全体は徐々に下降していきます。そしてグラフは最後の一人の患者さんが亡くなった時点で終了します。

 ただし実際の医療現場では、最後の患者さんが亡くなるまで、延々とグラフを作り続けるわけには行きませんし、場合によっては治療後所在不明になることもありますので、基本的にこのグラフは分かる範囲でという注釈がつくはずです。

 それはそれとして、実際のこのグラフを見ると、下降することは間違いありませんが、ほとんどすべてが下方に膨らんだ形(すなわち反比例のようなグラフ)になっています。

 これを見て、「自分自身の残りの人生は・・・」とショックを受ける患者さんもいるでしょうし、「頑張ればこのように生き残れるんだ」と解釈する人もいると思います。どちらがメンタル的に良いかと言えば、後者であることは間違いありませんが、そういったことについてはまた別の機会に書きたいと思います。

 なおこのグラフの曲線について、単に生存期間を見るのではなく、何故下に膨らむ形になるのかということを考えることによって、化学療法の効果について考察できそうです。


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