ベストの化学療法とは

 前ページの記事の式をじっと眺めています。こんな式です。

(ガン細胞の生産力+新たなガン細胞の生産力+骨髄抑制+副作用)><(アポトーシス+免疫+化学療法)

 
間にある不等号は、どちらになるか分からないので両方を書きました。

 今大学病院等で行われている化学療法は、左辺にある項目の骨髄抑制に対してはノイトロジンで、嘔吐等の副作用は制吐剤というように対処療法を行い、右辺の化学療法の効果を高める、と言うことが目的になっているように思います。

 確かに対処療法を行えば、みかけは骨髄抑制に対してもG−CSF(ノイトロジン)の利用で直ぐに回復し、制吐剤で吐き気は抑えられます。

 病院側も当然患者さんの見かけが元気に見えますので、予定通りの計画で治療を次々と行うことに心理的負担が少ないように思います。

 しかし抗ガン剤の毒性が、これらの副作用を含めて、肝臓や腎臓等、あらゆる内臓にじわじわと影響し、全体として少しずつ体力を奪っていくことは紛れもない事実です。

 ところが対処療法をやっていると、患者さん自身もこれらの事実を感知しにくくなり、自分の体力低下が想像以上に進んでいるということに気がつかないかもしれません。

 また、これはまだ私自身よく分かっていないことですが、強い化学療法が患者さん自身の正常細胞にも影響を及ぼしますから、当然アポトーシス機能や免疫機能も衰えることが予想されます。

 このアポトーシスや免疫機能については、対処療法で何らかの対処をする、という話は聞いたことがありませんので、ある意味では今の医療現場では無視されている、またはよく分からないので無視せざるを得ないようにも思えます。

 また強い化学療法を行えば行うほど、その療法で生き残ったリンパ腫細胞は薬剤に対して強い耐性を持つことになり、さらに新たな違う種類のガン細胞が生まれる可能性も指摘されています。

 しかしこうやって理詰めで書いていくと、「そんなことを言っていたら治療なんかできないじゃないか」という声が聞こえてきそうです。

 確かにその通りなんですが、実は腫瘍内科の先生方も悪性リンパ腫に対して化学療法は効果がある、という見解で一致しています。つまり数々のデメリットはあるものの、現段階では化学療法が一番効果があると言うことも事実です。

 と言うことは、結局また元の話に戻るのですが、体に負担を極力かけずに、リンパ腫細胞に対して最も効果を表す化学療法は何か、という話になるわけで、その際検討しなければいけないのは

@ 薬剤の組み合わせ

A 投与方法(経口か静脈投与か)

B 薬剤の投与量

C 静脈の場合の投与時間

D 薬剤の投与順

E 薬剤の投与日程(1日か数日か)

F 1クールの投与計画(投与を休み日数)

といったことを試行錯誤で検討しなくてはいけないということになりそうです。  


表紙に戻る 化学療法 直接の死因