細胞周期と悪性度の高さ

 ところで話の展開として、悪性リンパ腫のリンパ球が10億個ぐらいになるまでの期間を考えて、細胞周期を推定しましたが、なぜ10億個をめやすにしたのかということをここでまとめます。

 そもそも体内のリンパ球は、血液検査のデータに寄れば、1mm3あたり1500個ぐらいあるのが標準みたいです。また体内の血液の総量は約5L=5000cm3=5000000mm3ぐらいですので、体内のリンパ球の総数は

1500×5000000=7500000000個=75億個となります。

 正常なリンパ球は全身で75億個しかないわけですから、もしそこに異常なリンパ球が10億個もあったら、これは体へのダメージが相当大きいだろうと判断して10億個という数字を目安にしました。

 そこで再び前ページの仮の結論に戻るわけですが、悪性リンパ腫の細胞の細胞周期は7日程度と考えられるというのが、私の個人的な結論です。(このことが化学療法の実施周期に関係してきます)

 ちなみに「悪性度が強い」と医者はよく言いますが、細胞周期から考えると、これは細胞周期が短い、すなわち増殖の進行が早いため、なかなかその勢いを食い止められないという事なのかなと思えます。

 もちろん抗ガン剤が効かないという効力の問題もあるのかもしれませんが、むしろこの細胞周期が短いという事の方が悪性度を端的に表しているように思えます。

 さらに言うと、リンパ球の分化の過程の早い段階でリンパ腫細胞が生じた場合は、その細胞周期が短くなると言われていますから、悪性度が強いと診断される悪性リンパ腫は、原因となった元のリンパ腫細胞が生まれたのは分化の早い段階であるということも言えそうです。

 ということは、分化の過程の早い段階では、まだCD20という特有のタンパク質が出来ていないことも考えられますから、必然的にこれを標的とする「分子標的薬」である「リツキサン」では、リンパ腫細胞を完璧に押さえ込むことは出来ないという結論も導かれます。

 我が家の連れが入院当初に言われたことは、増殖スピードが早く、悪性度が強いということでした。これは、以上の考察から考えると、より骨髄に近い場所で悪性リンパ腫が発生したという意味に読み替えることも出来そうです。

 その後、本人の体力が落ちていたため、CHOP半量で化学療法を始めましたが、この時も主治医は当初「抗ガン剤に対する反応は良好です」という言い方をしていましたが、その後の血液検査では、すぐに再びリンパ腫細胞の増殖が始まったことが分かったようで、その時に「このリンパ腫は悪性度が強いようです」という言い方に変わりました。

 この時は私の方もまだ悪性リンパ腫に対する知識が不足してたため、単純にたちの悪い悪性リンパ腫になったと解釈していましたが、今考えると連れのリンパ腫は(結局病院側では最後まで発生部位が特定できませんでしたが)どこかの骨の骨髄近くで発生し、ひじょうに若い段階のリンパ球がリンパ腫細胞に変異したと考えていいように思えます。

 そしてだからこそ、一度は寛解に至り、リツキサン治療を継続していたにも拘わらず再発をしてしまった(もちろん当初の強い化学療法で免疫系がダメージを受けていたと言うこともありますが)というのが、現状では納得のいく説明のように思えます。


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