ミトコンドリアのはたらきを
抑制しているガン細胞

 生命が生命活動を産み出すためにはエネルギーが必要で、そのエネルギーは細胞の中で産み出されているのですが、その大部分はミトコンドリアが作り出しています。

 従って単純に考えてミトコンドリアが元気いっぱいなら、我々の生命活動も元気いっぱいで、健康な生活を送ることが出来ると考えられます。

 ところで細胞内でエネルギーを生み出す過程をきちんと調べると、実はミトコンドリア以外でもエネルギーを作り出していることが分かりました。

 細胞の中には様々な機能を持った小器官がありますが、基本的には中心にがあり、その周りにミトコンドリアが分散しています。

 要するに目玉焼きみたいなものがあれば、中心の黄身が核であり、白身の部分にちょっと塩やコショウをかけると、それがミトコンドリアに相当するわけですが、いわゆるそれらの残りである白身そのものを細胞質基質と呼んでいます。

 実はこの細胞質基質の部分でもわずかですがエネルギーを作っています。つまり細胞内で作られるエネルギーの大多数はミトコンドリアで作られるものの、そうでない細胞質基質でも少しエネルギーが作られていると言うことです。

 ちなみに作られるエネルギーの大きさの比は、1:18となって、ミトコンドリアで作られるエネルギーが18倍になっています。

 ただし面白いことに、細胞質基質でエネルギーを生み出すときは、その反応の過程で酸素は必要としません。細胞質基質内に存在する酵素のはたらきによって栄養分が分解され、その時にエネルギーを作っています。これは発酵という化学反応に似ています。 

 一方ミトコンドリアでエネルギーを作るときには酸素が必要なので、我々はそれを呼吸によって肺に吸い込み、血液によって各細胞に運んでいます。

 前者の過程を生物学では解糖系、後者の過程をクエン酸回路(TCA回路、クレブス回路とも呼ばれています)及び電子伝達系という言葉で呼んでいます。

 で、問題はここからなのですが、ガン細胞が活性化して分裂が活発になっているとき、そのエネルギーをどこから得ているかというと、どうやらミトコンドリアではなく、酸素を必要としない解糖系を利用していることが最近分かってきたみたいです。(悪性リンパ腫細胞ではなく、一般的なガン細胞の特徴です)

 その理由ですが、どうやらミトコンドリアが細胞死(アポトーシス)に関係するのではないかと言われています。つまりミトコンドリアからエネルギーを得ると、ミトコンドリアが活発に活動し、その分細胞死も誘発される可能性が大きくなるので、ガン細胞はミトコンドリアをなるべく使わず、不活性な状態において細胞死(アポトーシス)を招かないようにしているのではないかと言うことです。

 ということは、元気のなくなったミトコンドリアにカツを入れて、再び活発にエネルギーを生み出すようにし向ければ、必要のなくなった細胞(ガン細胞)は自然死(アポトーシス)を迎えると言うことで、このことからミトコンドリアが注目されているという事です。


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