どうやらミトコンドリアのはたらきとガン細胞の増殖には関係がありそうだということが分かり、さらにガン細胞が増殖するときは、ミトコンドリアのはたらきを抑制し、それ以外のいわゆる細胞質基質というところで生まれるエネルギーをガン細胞が利用しているということが分かってきました。
では、因果関係としてどちらが先なのか。すなわち、
@ 何らかの発ガン因子によってミトコンドリアの機能が低下した→ガン細胞増殖の環境が整った
A 何らかの発ガン因子によってガン細胞が生まれた→ガン細胞が増殖するためミトコンドリアのはたらきを邪魔している
鶏と卵みたいな関係のように私には感じるのですが、この関係を利用してミトコンドリアに対する治療を考えた場合、@なら発ガン因子を取り除き、ミトコンドリアの機能を再び活性化させてやれば(その方法はまだ調べていません)、その後ガン細胞は増殖しにくくなるような気がします。
しかしAの場合は、がん細胞からミトコンドリアの機能を衰えさせるような働きかけが行われているはずですから、その働きかけの内容を確かめ、それに対抗する方法を考えなくてはいけません。
どちらの考えが正しいのか、私にはまだ不勉強でよく分かりません。ただ現在分かっていることはガン細胞が増殖する時は
ア) ミトコンドリアが行っているクエン酸回路や電子伝達系でエネルギーを生み出すのではなく、
イ) 細胞質基質が行っている解糖系という反応でエネルギーを生み出しているという事です。
ではア)とイ)で反応が行われる場所(ミトコンドリアか細胞質基質)以外でどこに違いがあるかということですが、分かる範囲でまとめると以下のようになります。
解糖系 | クエン酸回路、電子伝達系 | |
場所 | 細胞質基質 | ミトコンドリア |
反応の流れ | 最初に解糖系、次にクエン酸回路、最後が水素伝達系 | |
反応物質 | グルコース(糖) | ピルビン酸 |
酸素 | 必要としない | 必要 |
生成物質 | ピルビン酸 | 水、二酸化炭素 |
産生エネルギー | 少ない | 多い、解糖系のおよそ18倍 |
ここで普通ならガン細胞が増殖するために、よりたくさんのエネルギーを産み出すミトコンドリア中のクエン酸回路や電子伝達系のエネルギーを使えばいいはずですが、実際には解糖系の少ないエネルギーでやりくりしているという実態があるわけで、最近この部分に注目が集まっていると言うことです。
なお余談ですが、ガン細胞が糖分を活発に摂取する事を利用して、若干の放射性物質を含んだ糖分を血液中に入れ、そこから出る放射線をレントゲン写真のように撮影すれば(若干意味合いが違いますが)、ガン細胞の場所が特定できます、これがPET検査の原理です。