前ページの内容からさらに推論をすすめると、細胞分裂の過程でたまたま塊になった細胞(細胞レベルの話ですから、塊になったといっても何μmというような小さな塊をイメージしています)があると、その中心部は低酸素状態になることが推測できます。
一方何回も書いているように人間の体内にはおよそ60兆個の細胞があり、この一部が日々分裂し入れ替わっているわけです。従ってその中でたまたま様々な原因により遺伝子のミスコピーが起きる細胞もかなりの数があると思います。
しかし通常そういった細胞は、細胞自身が持っている細胞死(アポトーシス)のメカニズムにより消滅するわけです。
また、たまたまそういったメカニズムを生き抜いた細胞があったとしても、その異常な遺伝子を今度はリンパ球が察知して、免疫反応によってこれまたこれらの細胞を消滅させる、ということになります。
しかし細胞死を逃れたガン細胞の周りにリンパ球等がなければ免疫反応は起きないわけで、要するにガン細胞が塊になっていれば、中心付近の細胞は低酸素状態になり、組織液が少ないためリンパ球の巡回も頻度が少なくなる事が予想されます。
ガン細胞は何年もかかって少しずつ増殖し、やがてある段階を越えるとその成長した塊が他の組織に影響を及ぼし、それによって症状の悪化を知る、というのが現在のがん治療の流れだと思います。
時系列で整理すると
体内のどこかで日々ガン細胞もどきが生まれている
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普通はすぐに細胞死(アポトーシス)で死滅する
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それを逃れる細胞がいた
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通常は免疫系で死滅させられる
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たまたま発生した場所が塊の中心付近だった
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そのため低酸素、低栄養状態になった
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中心付近で発生したため、リンパ球も届きにくく免疫系の影響を逃れた
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何年もかけて少しずつ増殖した
という風に考えると、ガン細胞は必然的に低酸素状態になり、解糖系を使用したエネルギー産生システムをうまく利用することが出来る環境になります。
しかもこうやって考えると、塊になったガン細胞には化学療法の抗ガン剤が効きにくい、ということも説明できます。つまり薬剤を体内に入れても、ガン細胞の周りに毛細血管や組織液が少なければ、薬剤は血管によって運ばれるわけですからダメージを受けにくいということになります。
さらにこの考えでいくと、最初から細胞が密に集まっている場所では低酸素状態になりやすいわけですから、逆に言うとそういった場所でガンが発生しやすいということにもなりそうです。
このサイトは、元々は悪性リンパ腫をより良く理解するために、自分の考えを整理しながらまとめているわけですが、こう考えると、悪性リンパ腫がリンパ節に多い、という理由の一つになりそうです。またリンパ節が腫れなかった我が家の連れのような場合は、その発生部位は骨髄ではないかと疑うことも出来ます。
なおこの推論は、塊になったガン細胞の周りでは血管や組織液が少ないという前提に立っています。その前提が間違っていれば、上記の推論は間違っていることになります。