血管新生阻害薬について

 前ページの内容を読み返しながら、話を先に進めようとしているのですが、またまた気になることが出てきました。

 それは前ページのBの内容に関することですが、ガン細胞は血管新生因子という物質を分泌して新たに正常な血管からガン細胞まで新たにでたらめな血管を作る作用があると言うことが分かりました。

 ただしその中を流れるものは、必要最低限の栄養物があればよく、低酸素状態を好むガン細胞にとっては酸素はそれほど必要ないと言うことも分かりました。従って液体成分である血しょうが流れていればいいのであって、赤血球は流れる必要はないという結論になります。

 そこでこの異常な血流をなんとか正常に戻す方法はないかと考えたのが、この章の出発点です。ただし血流が正常に戻れば、栄養物もますます潤沢に供給されるので、細胞分裂がますます活発になる可能性もあると書きました。

 前ページでは、この場合ガン細胞は解糖系しか利用しないので、それほど急激に増殖はしない可能性があり、あとはそのスピードと酸素が供給されることによってミトコンドリアが活性化し、細胞死(アポトーシス)が発動されるスピード競争になるのではと考えました。

 というように頭の中でまとめてきたのですが、ここでそれならいっそのこと、この新しく作られる血管の新生を阻害して、ガン細胞への栄養物の供給をストップしてしまったらいいのではないか、と考えて調べている内に、血管新生阻害薬というものが開発され、実際に利用されていることを知りました。

 その代表的な薬の名前は「アバスチン」という名前のようです。ちなみに悪性リンパ腫では使われていないと思います。

 実際に利用された結果ですが、確かに初期のガン細胞の増殖の勢いはある程度止められるようなことが報告されています。しかし同時に転移したり副作用が生じる可能性も指摘されています。

 その原因ですが、血管新生阻害薬というのは、血管が新たに生まれそうなときにそれを阻害する薬であって、出来てしまった新しい血管を破壊するというような作用はないということです。

 と言うことは出来かけたガン細胞の増殖をストップさせ、血管を伝って他の場所に転移することを抑制する効果はありそうです。

 しかし、ガン細胞は栄養物が供給されなければ休眠状態になるだけで、死滅はしないと言うことが分かりましたので、何か機会があればすぐに復活と言うことになりそうです。

 さらに残念ながら抗ガン剤ではありませんが、それなりの副作用(口内炎、消化管出血、脳血栓等)が生じる可能性があると書かれたページもありました。

 一方それでは出来上がった血管を壊せばいいじゃないかという考えもありそうですが、出来上がった血管と既存の正常な血管との違いを明確にしないと、もしそういった薬剤が体内に入れば全身の血管が壊れてしまうと言う悲惨な結果になります。

 というわけで、話が戻りますが、栄養がガン細胞に供給されることは間違いありませんが、それと一緒に充分な酸素も供給し、さらに場合によっては抗ガン剤等の薬剤が充分にガン細胞に浸透できるように、正常な血管を作ることが大事なのではないかなと思えます。


表紙に戻る 自分で出来ること 低酸素状態になる原因