キトサンとは

 カニやエビ等の甲殻類の殻はひじょうに硬い物質で出来ていますが、この物質の主成分をキチンと呼びます。ただしこういった生物の殻はキチンという物質だけで出来ているわけではなく、それ以外の様々な物質が混合、結合して硬い殻を作っています。

 従って、キチンはその殻から不純物を様々な化学的方法で分離したものと言えます。化学式は(C8H13NO5)nと言うように表されますが、( )内の化学式が一つの単位となって、それがいくつも鎖状に結合していくので、その数をnで表しています。

 では「キトサン」とはどうようものかというと、このキチンに中学校や高校でよく化学の実験に使用する、強い塩基性(アルカリ性)の性質を持つ水酸化ナトリウムを加え、一部の構造を変化させたものです。化学式は(C6H11NO4)nで表されます。

 ただしこの化学変化は、どうやら100%変化するわけではなく、途中でいろいろな断片も生じるみたいです。つまりキトサンそのものが100%生じるわけではないと言うことです。

 ということはキトサンという物質のみに注目するなら、健康食品としてどの程度の純度のものが利用されているかと言うことに注意が必要なのかなと感じました。

 キトサンの用途ですが、ウィキペディアを見ると実に様々な用途に使われています。一つはキトサンそのものが様々なものを抱え込む性質があるからだと思いますが、繊維中に練り込んで抗菌性を高めるとか、重金属をその中に取りこませるとかの用途があります。

 また生物由来の物質で毒性が少ないということを利用して、化粧品やヤケド治療用の保護材、人工皮膚にも使われているようです。

 ちなみにアトピー持ちの私は、一時期漢方の先生から、蝉の抜け殻をすりつぶして飲むと良いという指導を受けたことがあり、実際にすりつぶして飲んだこともあります。(これはキトサンではなく、キチンに注目した処方だと思います。

 結果的に何らかの改善があったかどうかは、不明です。よく分かりませんでした。

 なお、このキトサンは特定保健用食品として「コレステロールの高い方または注意している方の食生活の改善に役立ちます」という表示が認められているそうで、それに則って様々な健康食品が販売されています。

 ただし主たる効能は上記の「 」内の文章にあるように「食生活の改善」であって、「免疫力を高める」事は認められていません。

 ネットの情報では「免疫力を高める」という語句以外にも様々な効能が書かれているページがありました。実際もしかしたらそうゆう効果もあるのかもしれませんが、どうしてそのような効能があるのかという理屈が書かれたページはありませんでした。

 また実際に「免疫力が上がった」と言うことを、多数の例で臨床的に証明した実験もなさそうです。ただしこんな改善があったという報告はいろいろ調べていくと出てきました。

 ということは人によっては一定の効果があるのかなとも思えますが、ではどんな人に向いているのかというと、キトサンという成分からも体験談からも推定することは出来ませんでした。

 つまり試してみるしかないと言うことですが、その結果体調が帰って悪くなるリスクもありますから、そう簡単に摂取は出来ないなと感じます。

 同時に「効果があった」という大学名の入った報告もいくつかネット上で見ましたが、その記事に書かれている教授名は現在の該当大学の名簿には見あたりませんでした。

 もちろん古い記録だから人が変わっている可能性も大きいわけですが、だとすると体験談や報告と言ったネットの情報をどこまで信用するかというのがひじょうに難しい問題だなと感じてしまいます。 
 


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