サメ軟骨とは

 最初にお詫びです。目が悪いせいもあるのですが(と一応言い訳をして)、「サメ軟骨」ではなく、「サメ軟膏」だとばっかり思っていて、今検索して初めて間違いに気がつきました。

 軟膏だと、塗り薬ですから、サメのエキスを塗ってどんな効果があるんだと疑問に思っていましたが、軟骨ということなら、これは服用することになりそうで、それなら効果があるかどうかは分かりませんが、言葉の上では納得です。

 というわけで、これまでは植物に由来するものが多かったのですが、サメ軟骨は当然サメですから動物です。ではなぜサメの軟骨なのかと言うことですが、基本的に生命力の旺盛な動物にあやかろうという気持ちがあるのかなと思っています。

 一般的には「サメ」というと、ジョーズに代表される獰猛な人食い鮫を思い浮かべます。実際には人にはまったく危害を加えないジンベイザメのようなサメも多いのですが、テレビ等でセンセーショナルに取り上げられるものは「ホオジロザメ」ですから、そのようなイメージが定着しています。

 それはそれとして、軟骨とは何かというと、読んで字のごとく柔らかい骨です。柔軟性のある骨と言っても良いかもしれません。人間で言えば、関節や耳、鼻、椎間板と言った場所が該当します。

 特に関節や椎間板といった場所では、本来の硬い骨と硬い骨を接続する関節の中にあって、その関節がスムースに動くようなはたらきをしています。ところが残念ながらこの軟骨は、加齢と共にすり減ることがあり、その場合骨と骨が直接ぶつかり事になり関節痛や腰痛の原因になることが多いということです。

 成分ですが、要するに骨でありながら弾力性を持っているわけですから、通常の骨に含まれるリン酸カルシウム以外に、様々な成分が含まれています。これは人間もサメも同様ですから、この成分に目をつけて健康食品にしたものがサメ軟骨だというわけです。

 ちなみに人間の場合の軟骨の成分ですが、コラーゲン(あえてその代表的なはたらきを調べると、細胞どうしを結合)、コンドロイチン(組織に弾力を与える)、ヒアルロン酸(関節の動きをスムースにする)、グルコサミン(全体を固める)といった成分が含まれていますが、いずれも膝痛、関節痛更には若々しい皮膚になる、というような健康食品の広告でよく目にしたり耳にしたりするものです。

 だからといって、これらの成分を経口摂取すれば、すぐに肌は瑞々しくなり、関節痛や腰痛が治まるかというと、どうやらそんな簡単にはいかないようです。

 要するにこういった成分を経口摂取したとしても、コラーゲンやヒアルロン酸の場合はひじょうに大きな分子ですから、それが内臓から消化される過程でバラバラに分解されてしまい、それを再び骨組織が軟骨に有用な成分として組み直す必要があると言うことです。従って、軟骨の補強を目的にしても、その効果のほどはかなり限定的だなと思われます。

 一方グルコサミンやコンドロイチンは、上記の物質に較べると分子はそれほど大きくないようなので多少はそのまま吸収される可能性があります。しかしそれが血流に乗って、関節に行き渡るかどうかと言うのは別問題です。

 ネットの情報でも、実際に効果があるかどうかと言うことは、専門家の間でも意見が分かれているようです。

 と言うようなことを頭の片隅において、「サメ軟骨」について調べてみると、やはり当たり前ですが、人間の軟骨と同様な成分を含んでいることが分かりました。

 従ってその薬効も前述の通りで、関節痛や腰痛を緩和する効果があるかもしれないと思われますが、消化吸収の原理を考えると、画期的な効果は期待できないような気がします。

 また腫瘍や免疫力との関係を調べてみると、先ず多く見られるのが「血管新生阻害作用」というもので、コンドロイチンやコンドロイチン硫酸という物質が、ガン細胞の周りに新たに出来る新しい血管を作らせないようにする、というものです。

 しかし、何故阻害するのかというメカニズムについて詳しく記述してるものは見つけられませんでした。多くは「血管新生阻害作用」があると言われている、という伝聞であって、その根拠を示した記述は見つかりませんでした。

 というわけで、この健康食品については、関節痛に効くということで、膨大な宣伝が行われていますので、成分そのものは良く耳にしますが、宣伝が派手な分、実際の効果については私はあまり期待できないのではないかと思えてしまいます。

 ただこのサメ軟骨について調べていて、自分なりに今後注意しなければいけないなと思ったのは、

@ 経口摂取した健康食品を消化吸収すると、その成分はどのように変化するか
A 変化した成分が、どこに蓄えられるのか、またはどういった部位に集まるのか
B 変化した成分が、直接効くのか、または細胞等で新たにその成分を使って違う物質を作るのか
C 有用な成分が体内に生じたとして、それが的確に患部(例えば腫瘍細胞)まで運搬されるのか
D 腫瘍細胞に到達した、有用と思われる成分が、腫瘍細胞に対してどのような効果を発揮するのか

と言うようなことが、きちんと分からないと、特定の健康食品に効果があるかないかということを理論的に証明するのは難しいなと思えます。

 しかしよく考えると、これは化学療法で使用している抗ガン剤に付いても同じようなことが言えるなとも思えます。ただ抗ガン剤の場合は、成分がはっきりしていて、使用した場合の用法や用量がある程度決められているので、統計的に見て効果があったかどうかが健康食品より分かりやすいと言えます。

 健康食品の場合は、そういった統一的な企画で作られているわけではなさそうですし、含まれている成分もメーカーによって異なるため、効く効かないを単純に議論するのは難しいんだろうなと思うようになってきました。 


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