フコイダンの成分と人体中での変化

 実験室ではガン細胞に対してアポトーシスを誘導したという結果が得られるのに、人体においてはさしたる臨床例が発表されていないのは何故なのか、ということを考えているのですが、なかなか素人には難しいです。

 そもそもフコイダンというのはコンブやワカメ、モズク等に含まれる、ネバネバした食物繊維だと言うことは分かっています。さらにその成分はフコースという糖の一種が数十から数十万個も繋がった化合物だということです。

 フコースというのは、化学式がC6H12O5で表される物質ですから、その分子量は164ぐらいです。これが数十から数十万個も結合していると言うことは、全体の分子量は2000〜1640万という巨大な分子になります。

 実験室ではその物質をそのまま溶液に溶かして、ガン細胞に混ぜて結果を観察すればいいわけですが、人間が健康食品としてこれを摂取する場合、最初に胃で分解、さらに小腸等で吸収という過程を経ることになります。

 当然ながら、分解というのは結合している鎖を切り離し、小腸の内壁からその切り離した断片を吸収することになります。

 ということは、制癌作用のあるフコイダンを摂取したつもりでも、小腸から吸収されるときは、断片化されたフコースという物質に戻っている可能性が大きいです。(場合によってはもっと断片化されている可能性もありますが、不勉強でよく分かりません)

 ただここで言いたいことは、フコイダンとして存在すれば制癌作用があったかもしれない物質ですが、それを経口摂取することによって別の物資に変わってしまう可能性が大きいと言うことです。

 さらに断片化された元フコイダンは、肝臓等で再合成され人体にとって有用な物質に変わるのだと思いますが、その時にふたたびフコイダンのような大きな分子量の物質に再合成されるとは思えません。(もしそんな大きな物質が合成されて血液中に放出されたら、すぐに血栓ができて血流が滞ってしまう可能性もあります)

 こういった指摘を考慮して、一部の健康食品では「低分子フコイダン」というような語句を使って、あたかも吸収率が良いかのような表現をしている場合がありますが、有機化学上のフコイダンの定義からすると、低分子のフコイダンはあり得ないということになります。

 ただこういった論理の展開をすると、ほとんどすべての食品は、分解吸収される過程で、最初に含んでいた大きな分子量の成分は、ほとんど違う物質に変わってしまうということになります。

 一方分解できずに腸内を通過して、そのまま排出される可能性もあります。食物繊維を摂ると便秘によい、というのはそういった吸収できない繊維成分が、そのまま腸内の不要物と一緒に排出されやすいと言うことを意味しているように思います。

 というわけでフコイダンそのものを、うまく活用できればある程度の制癌作用が見込まれるのかもしれませんが、人体の分解吸収というメカニズムを考えると、どうもそう簡単にはいかないようだ、と結論せざるを得ません。

 ただここに来てなんとなく分かってきたのですが、ガンに対して効果があると一般的に認識されている健康食品の成分は、多糖類が多いということに気がつき始めました。つまり本来なら吸収できないような成分が体内に入ることによって、それを免疫細胞が異物と判断し、免疫機能を活性化させるという考え方です。

 この考え方にたてば、別に分解消化される必要はなく、むしろそうならないことが免疫細胞を刺激することになるわけです。つまり人体に害のないような食べ物で、消化吸収しにくいものの中に免疫細胞を活性化させる作用があるかもしれないと言うことです。

 この考えをさらに発展させると、異物に対して反応しやすい私のようなアレルギー体質の人間は、免疫細胞のはたらきが活性化しやすいのでガンになりにくいという論理にもなります。

 この辺りについてもいずれは、真面目に考えてみたいと思っていますが、フコイダンについては実験室では何らかの効果が生じる可能性があるが、人間が経口摂取しても、それと同等の効果は期待できない、という結論になりそうです。

 ただし、分解や消化吸収に関係なく、摂取すること自体が免疫細胞を刺激することになるという考えに立てば、もしかしたら免疫力回復に効果があるのかもしれない、という言い方は出来るかもしれません。


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