ANK自己リンパ球免疫療法に関して

 悪性リンパ腫に限らず、一般的な病気の原因を考えても、予防として出来ることは、やはり「ストレス解消」「睡眠不足の解消」「片寄った食事の改善」「適度な運動」というようなことがポイントになると思われます。

 しかし前ページにまとめたように、これらのことを改善しても、風邪程度の通常の病気ならともかく、今まさに勝手な増殖を繰り返してある程度大きくなって勢力を拡大しているガン細胞に対しては、例え効果があったとしても増殖の勢いを止めて駆逐するまでには至らないような気もします。

 ではどうするのか?残念ながら、これまでまとめてきたことを振り返ってみると選択肢はあまりないように思え、実際の医療現場でもそういった状況に則った治療しか行われていないような気がします。

 つまり、ガン細胞がかたまっているなら「外科的な摘出」がもっとも有効な手段であり、そうでない場合は全身が対象になりますから薬物(化学療法)に頼らざるを得ない、と言うことになります。

 ただし最近は分子標的薬がいろいろと開発されていますので、素人判断では化学療法としてはこの分子標的薬の効果が一番大きいかもしれないなとは思っています。

 もちろん他にも全身に放射線を浴びれば(温泉療法?)、放射線に影響を受けやすいガン細胞は分裂の勢いを削がれる可能性はあるなと思いますが、当然正常な細胞もダメージを受けるはずで、そうなると体力が低下するだろうなと想像できます。

 とするとガン細胞が全身に分布するような悪性リンパ腫の場合に、治療として次に考えられる手段は、自分の免疫系をさらに強化するしかないのかなと思えます。

 たまたま新聞等の広告に出ていたので目についたのですが、NK細胞がガン細胞に対する攻撃力がもっとも大きいので、これを取りだし、体外で培養し、それを体内に入れれば免疫が活性化し、ガン細胞を駆逐できるというような方法があるようです。

 「ANK自己リンパ球免疫療法」と呼ばれるそうですが、何回か書いているように、既存のNK細胞が体調不良等により、ほとんど存在しない時期があり、その時期にガン細胞が増殖したなら、この治療の可能性はありそうですが、単に数を増やしたから活性が上がると考えるのは、少し乱暴な論理に思えます。

 そもそも免疫系というのはB細胞やT細胞、NK細胞、さらにはマクロファージ等が連携して力を発揮するのであって、さらにこれらの細胞の存在率(白血球分画)が一定の値になるとき、最大の効果を発揮するように思えます。

 従って、NK細胞だけを培養し、増殖させ体内に入れたとしても、その反応性は限られてしまうような気がします。

 またもともとは、そういったNK細胞が存在したにも拘わらずガン細胞が出来てしまったわけですから、同じNK細胞の数を増やしても治療効果は上がらないようにも思えます。

 さらに抗ガン剤と併用すると、抗ガン剤が増やしたNK細胞を駆逐する可能性があり、そうなると化学療法との併用が出来ない可能性も考えられます。

 というわけで、個人的にはあまり効果がないと思えるような療法ですが、当然ながら、「じゃあまったく効果がないのか」と問われれば、医師でもない私としては「分からない」と答えざるを得ません。

 また実際に、あちこちの病院でこういった療法を提案している実績もあるようですから(提案の実績であって治療の実績ではなさそうですが)、頭ごなしに素人が否定することは出来ません。

 ただし私の頭の中では、こういった治療の効果をどう判定するのか、と言うのが常に引っ掛かります。つまり他の治療を一切拒絶してこの療法だけを試みたら、今まさに増殖していたガン細胞が、短期間に消えてなくなったということが複数例あれば、効果はあったと判断できますが、通常は様々な療法を組み合わせているかと思われます。

 悪意のある言い方をすれば、例え治ったように見えても、それすら自分の免疫で治ったのであって、この療法を行ったからではないと主張することも出来るわけです。

 結局その辺りは多数の臨床例を分析して専門家が結論づけるしかないように思えるわけですが、悪性リンパ腫という病気そのものが多種多様存在し、その治療もいろいろな方法があるので、その組み合わせは無限とも思えてしまいます。

 つまり同一の条件での臨床例を比較することがひじょうに難しい、というのが、この療法に限らず、悪性リンパ腫すべての療法について、効く効かないの判定を難しくしているなと思わざるを得ないということです。


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