悪性リンパ腫に様々な病名がある理由

 前ページで、通常の腫瘍は発生場所の部位で区分されているのに対して、悪性リンパ腫はリンパ球の名前や形状、特徴といったものを手がかりにして分類されているようだと書きました。

 今、胃ガンの分類を見ているのですが、胃ガンは基本的に胃の内壁の粘膜を構成している細胞の一部が勝手な増殖を始める病気ですが、その分類は、内壁の粘膜を構成する細胞のどの部分に発生したかで名称を分けているようです。

 ウィキペディアでみると10種類ぐらいの名前が出ています。

 一方悪性リンパ腫の分類ですが、「ニチレイバイオサイエンス」というサイトにWHO(世界保健機構)の分類という分かりやすい図が出ています。

 これに寄れば、正式な定義はよく分かりませんが、先ず大きく「非ホジキンリンパ腫」と「ホジキンリンパ腫」に分かれます。

 ホジキンリンパ腫の方は、その後リンパ球の表面に存在する様々なタンパク質の形によって大きく二つに分かれ、さらに一方が4種類ぐらいになっています。

 非ホジキンリンパ腫の方は、リンパ球の種類である「Bリンパ球」(B細胞)と「Tリンパ球」(T細胞)や「NKリンパ球」(NK細胞)との二つに分かれ、更にそれぞれが成長段階によって2〜3種類に分かれ、さらにさらに表面のタンパク質によって細かく枝分かれしていきます。

 悪性リンパ腫という病気の特徴を自分なりに勉強する前は、なんとまあいろいろな種類の悪性リンパ腫があるんだと単純に思うだけでしたが、最近なぜこのようにいろいろな種類が生じてしまうのかということを考えて、冒頭の通常の腫瘍との違いに気がつきました。

 すなわち、発生部位による分類か、細胞そのものの種類による分類かということなのですが、この違いが生じる理由は、腫瘍の発生過程が根本的に異なっているからではないかと思っています。

 ではその発生過程の違いとは何か?

1.通常の腫瘍は、完成した組織内で細胞分裂によって増殖する

 まあ当たり前のことですが、要するに何らかの原因で欠陥を持ってしまった細胞が、そのまま二つに分かれて増殖していくということです。

 鍵になるのは完成した組織内というのが1点。すなわち細胞そのものの中身が変化することはない訳です。

 そしてもう一つが、同じものが二つできると言うこと。生物学の基本である細胞分裂のイメージそのままです。

 これに対して悪性リンパ腫細胞の場合は

1.リンパ球は造血幹細胞から生まれる

 リンパ球は造血幹細胞から産み出されます。このとき造血幹細胞が二つに分裂するのではなく、造血幹細胞がリンパ球の元になる細胞を一つ産み出すというイメージです。

 つまり造血幹細胞そのものは変化せずに、様々な血球の元になる細胞を産み出していくイメージです。

2.リンパ腫細胞は成長過程で生まれる

 通常の腫瘍の場合、すでに出来上がった組織内の細胞の一部が異常増殖を起こすわけですが、リンパ腫の場合は、リンパ球として生まれようとしている段階から、一人前のリンパ球として成長するまで様々な段階があります。

 そしてその段階の、どこの過程で異常が発生するかによって、病気の種類が変わるということだと思います。このことがあるため必然的に病名が増えていくわけです。

 つまり、造血幹細胞そのものに欠陥が生じた場合は、そこから生まれる新しいリンパ球に次々と欠陥が連鎖する可能性があるということです。(もしかするとこの段階の病気が白血病に分類されるのかもしれません)

 この場合は、新しく生まれたリンパ球ではなく、そもそもの欠陥造血幹細胞を駆逐しない限り病気が治ることはないような気がします。 

 更に生まれた後に欠陥が生じた場合はどうなのか?これを次のページで考えてみます。


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