受精から卵割、分化へ

 人間は精子と卵子の受精によって生まれます。1個の精子が卵子に突入すると、卵子はすぐにそれ以上の精子が突入できないように、表面に膜を作ります。

 受精卵の内部では精子と卵子が持っている遺伝子が融合し、細胞分裂が始まります。と同時に卵子は卵管から子宮内部に移動し、子宮の内部にくっつきます。(着床

 この間、受精卵の内部では細胞分裂が始まっていますが、卵管を移動しているときは受精卵の大きさは変化しないため、大きな細胞が小さな細胞に分かれていくだけです。これを生物学では「卵割」と呼んでいます。

 子宮内部にくっついた卵子はその場所で細胞分裂を続け、少しずつ大きくなっていきます。この時、ある細胞は神経になり、ある細胞は筋肉になり、ある細胞は皮膚になり、というふうにそれぞれの役割を持って分かれていきます。

 これを生物学では「分化」と呼びますが、要するに、ある1個の細胞が神経になったり皮膚になったりするわけで、その意味ではこの時期のすべての細胞が何にでもなれる能力を持っていると考えても良さそうです。

 やがて分化した細胞は、それぞれの役割を担いながら、最終的には約60兆個の細胞になります。ものすごい数ですが、単純に1個の細胞から2倍していくだけでも、10回繰り返せば相当大きな数になりますから、数のレベルで言えばそれほど大きな数ではないのかもしれません。

 それはさておき、ある1個の細胞はそのときの人体の成長のニーズに合わせて、いろんな組織に変化することが出来るわけです。つまりおおもとの細胞と言うことで、この細胞には「幹細胞」という名前が付いています。

 悪性リンパ腫で、自己の造血機能が損なわれていたり、免疫がうまくはたらかないような状態の時、「造血幹細胞移植」という話しが出てきますが、この場合の造血幹細胞は、血球成分を作るもとになっている幹細胞を、他から移植してくる、という意味になります。

 そうすればこれらの細胞は自己増殖で増える可能性がありますから、骨髄が弱り切って血球を作れなくなった時でも、新しい血球が作られることになります。

 さて、ここまでの話しは細胞の数や役割についてまとめてきたわけですが、もともとこのページを書き始めたきっかけは、細胞分裂の回数と寿命について考え始めたからです。

 幹細胞は基本的に何回でも分裂できる能力を持っていますが、前のページにも書いたように、だいたい50回ぐらい分裂を繰り返すと自然死に至ります。


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