民間療法について

 正常なリンパ球がある日突然異常なリンパ球(悪性リンパ腫細胞)となり増殖を始めます。その原因は不明です。 
 普通は発生した時点でそれらは異常細胞と判断され自然死するか、免疫細胞のはたらきにより抹消されるはずですが、それを生き抜いたと言うことは、自分自身の免疫では、もはやその増殖の勢いを止めることが出来ないと言うことです。

 ただしこの病気の患者さんは、年齢が高いほど多いと言われているようなので、やはり免疫系統が強ければ強いほど、病気にかかりにくく、また悪性リンパ腫細胞が作られてもすぐに破壊されてしまうのかもしれません。

 この点に注目して、自己免疫を高めるいくつかの民間療法が支持されているのだと思います。しかし明らかに効果があると思われる療法があれば、それは医療分野に取り入れられているはずです。

 つまりフコイダンを初めとする民間療法を試す場合は、「もしかしたら効果があるかもしれない」という期待感で試すしかないなというのが率直な感想です。

 ただし、人間の生理作用はまだまだ未解決の部分も多く、ストレスが病気の引き金になったり、笑いが健康の元になっていたり、自然治癒という体験をする人が出現したりと、理屈では考えられないことが起きることも確かだと思います。

 そういった意味では、数ある民間療法の中に、もしかしたら自分に適するものがあるかもしれません。しかし通常の医療措置を受けながら、すべての民間療法を試すわけにもいかず、さらにこれらの療法は保険も効かないので経済的にも厳しいです。

 また、民間療法を行ったから「治った」または「治らなかった」という判断は、他の治療の効果と絡んで、判断が難しくなります。本来なら同じ条件で、一方は民間療法を試すグループ、もう一方は試さないグループと分けて効果を比較することがいいのですが、そもそも同じ条件という前提があり得ません。

 性別、年齢、症状、治療方法、治療段階、病院等、すべてが同じ条件の患者さんが二人以上いることなんてあり得ません。従って治療効果を単純に比較することは出来ず、結局多くの症例を見ながら、これがベストだと思える民間療法を探すことになります。

 これは悪性リンパ腫に対する「CHOP療法」等の考え方とまったく同じで、たくさんの症例を集めて、この療法が一番患者の体に負担をかけず(実際には人によって大きな負担になりますが)、生存率が高いと統計的に判断されているわけです。

 (私の連れは、入院時からかなりステージWという重度の症状だったため、医師もそれを考慮して新しい療法を試したようです。結果的に一時は回復しましたが、結局免疫系が自力で回復できなくなってしまいました。強い療法は、ある閾値を越すと、一挙に体に負担が来るという印象を持ちました)

 ということは、ある種の民間療法がもしかしたら効くかもしれないと思ったら、先ずその症例がいくつぐらいあるのかということから調べなくてはいけないのかもしれません。この辺は厳正にやらないと、もしかしたら民間療法を試すことによって症状が悪化する可能性も否定できません。

 健康雑誌では、様々な民間療法を、毎月毎月これでもかと紹介していますが、症例を多くして統計学的に考察しようと思ったら、毎月新しい療法を紹介できるわけがありません。

 私の連れが闘病生活を送っているときつくづく思ったのですが、患者や家族も病気に対する知識をある程度持っていないと、医師の言うがままになってしまいます。「それでいい。医師を信頼する」と考える人はそれでいいのですが、私は自分の体への医療行為が本当に適切かどうか、自分でも判断したいと思っています。


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