リツキサン初回投与時の緊張

 リツキサンというのは、別のページですでにまとめていますが、分子標的薬と言われているものです。

 リンパ腫細胞がB細胞に由来するものの場合、リンパ球の表面にCD20というたんぱく質が現れます。

 リツキサンは、このたんぱく質に結合するように作られていて、結合するとリンパ球が本来持っている免疫系から異物として認識され攻撃を受けると言うメカニズムです。

 従って、悪性リンパ腫細胞が、リンパ球の増殖時に生じている場合、この薬の効果は大きいように思われます。

 ただし上にも書いたように、リツキサンがリンパ球を破壊するのではなく、本来の免疫系が破壊するわけですから、自分自身の免疫系が衰えている場合にこの薬を使用しても、効果はあまりないという結論になります。

 またリツキサンは成熟したリンパ球に対して作用するわけですから、悪性リンパ腫になったのが、造血幹細胞の段階だと、まだCD20は表れていないので、結局増殖後のリンパ腫細胞に結合するだけで、大元の原因となった幹細胞には影響を与えられないことになりそうです。

 つまりリツキサンが効果を発揮する条件は

1. リンパ腫細胞がリンパ球そのものの増殖過程で生まれている

2. 自身の免疫系がしっかりと働いている

 という二つの条件が必要なわけです。

 一方上記の条件をクリアすると、どうやら劇的な効果を上げることもあるようで、それがあまりにも急激に起きると体への負担が大きいようです。

 またリツキサン自体、遺伝子工学の技術を用いて作られていますので、薬自体を体が異分子として認識し攻撃したり、また体内の生理的なメカニズムが乱されることがあるようで、それが副作用となってあらわれます。

 ただし、不思議なことにこういった副作用と思える症状は初回投与時に一番激しく出るようで、2回目以降はほとんど出なくなります。

 実際我が家のYは以下のような副作用を生じました。(以下闘病記からの抜粋です)

今日からリツキサンが始まる。

 まったく新しい薬剤なので副作用が心配だ。(中略)

 最初にブルフェン(解熱鎮痛消炎剤)を服用。続いてアレルギー止めシロップを飲む。10時半よりリツキサン開始、2時40分終了。

 この間1時間おきに検温、血圧測定。終了時頃若干の微熱。つらく感じるような副作用は出ていないが、体が熱く火照るようで、さかんに吹き出る汗をタオルで拭いている。

 リツキサンは初回に副作用が出ることが多い薬だが、幸いなことにこれ以外の副作用はなかった。

 というわけで、Yの場合は微熱と体が異常に火照るという副作用を感じたものの、大きな影響はありませんでした。(異常に火照るのも大きな影響といえなくはないですが)

 しかもこの後数回リツキサンを投与されていますが、体の火照りが激しく生じたのは、この1回目のときだけだったようです。

 なお初回投与時の病院側の気の使い方はかなりのもので、スタッフ一同の緊張が私にも伝わってきました。

 上には1時間おきの検温と書きましたが、実際には15分ごとぐらいに看護師さんが病室を訪れ異常がないかを確認していました。

 また病室のドア(この時点で個室に入っていましたが)も開けっ放しで、何かがあったらすぐに誰かが室内に駆け込めるような体制で臨んでいるようでした。

 というわけで、リツキサンについては、うまくいけば効果が大きい薬剤ですが、初回投与時だけは、病院側も患者側もかなり神経を使わないといけない薬剤のようです。


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