具体的な治療内容


 さらに実際の具体的治療について主治医から説明があった。

 「点滴の管を鎖骨または太ももの付け根に入れます。(これを中心静脈カテーテル、略してCVと呼んでいる)これにより点滴が楽に行える上、両手も自由に使えます」

 「またすぐに骨髄穿刺を行います。さらに必要に応じて輸血を行う場合があります。治療のリスクについて云々かんぬん」いろいろ細かく説明してくれる。

 先の病院でもそうだったが、治療のリスクについてかなり詳しく説明される。責任回避かともかんぐれるが、わずかな確率でも起こりえることを事前に知らせておかなければいけないのだろうし、患者や家族も病院が何をやろうとしているのか、事前にきちんと了解していなければならないということだろう。

 入院初期には、検査や治療に当たっていろいろなリスクがあることを、次から次へと説明された。

 「これでは治療以前に検査で体力を消耗し、検査によって危篤状態に陥るのではないか」と不安になったが、実際には警告されたような緊急事態にはまったくならなかった。

 Yは、ひととおりの治療方針の説明を受けたあとレントゲン撮影に向かった。この間を利用して、主治医になるH医師より現在分かっている範囲で、正式な病名のより詳しい説明をしてもらった。

 病名:悪性リンパ腫の第W期。種類は非ホジキン型でB型、びまん性大細胞リンパ腫という。

 後々私自身が勉強していくうちに分かったことだが、第W期というのは、リンパ腫細胞が体内の数ヶ所に存在し、治療がひじょうに難しい状態のことをいう。

 この場合いったん寛解しても再発率が80%程度ある。これを聞いただけで、小心者の私が患者だったら戦意喪失していただろう。

 病室に戻ったが、ちょうど骨髄穿刺を行っているところだったので、そのままいったん帰宅した。早朝からの長かった一日がほぼ終了した。

 国内ではほぼ最高レベルの設備を誇る、最新の医療機関に入院できたことで、ほんの少しだけ気が楽になった。治療の内容や副作用についてはまだまだ多くの不安があるが、現状で家族ができることは限られている。とりあえず主治医に任せるしかない。

 次に心配なのは下世話な話だが、やはり入院費用だ。すでに最初の病院の支払額数10万が確定していて、なおかつ今回の病院への入院保証金10万が必要になっている。

 虎の子の定額貯金を解約。いずれは高額医療費補助で返金があるのだろうが、数ヵ月後ということなので当面は自力で支払わなければならない。しかし、この時点では今後の請求金額も返金額もさっぱり分かっていなかった。

 仕事、病院、家事、息子の相手、私の母親の健康状態、Yのお母さんや妹さんとの打ち合わせ、さらに家計と難題が次々とのしかかってくる。

 家族が1人入院しただけだが、精神的負担と肉体的負担はとてつもなく大きい。健康であることがいかに重要か、改めて思い知らされる。


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