主治医と話し合い その2

 6月23日(土)、転院6日目。

 病室に入ると、いきなり38度の熱で、ぐったりしているYの姿が目に飛び込んできた。昨日までの様子とあまりに違うので慌てる。

 Yは、発熱の原因は洗髪にあると思っていたようだが、抗ガン剤の治療を行うために、ステロイド剤を止めたせいであることが後で分かった。咳はそれほど出ていない。

 現状の数値、LDHは250(211以内)、ALP(アルカリフォスターゼという)は542(338以内)と、どちらもまだかなり高い。クレアチニンは1.6で、少し下がった。腎臓が回復していない。あさってからの治療に不安を感じる。

 妹さんのご主人も来ていたので、別室で再度主治医と話し合い。このようなとき、この病院では必ず看護士が一人付き添い、話の内容をメモしている。

 再び現状の説明から話が始まった。

 「左胸の上部にリンパ腫細胞があります。また肺の下部にも影があり、これもリンパ腫細胞だと思われます。またこの肺の影が咳の原因になっています」

 「その他、肝臓、脾臓、腎臓がかなりはれています。ただしレントゲンで見ると、肺の影は入院当初より少し薄くなっています」

 「脳のMRIには異常は見られませんでした。現在はステロイド剤で合併症を抑制しています。この状態が続くなら、明後日からCHOP療法を行えると思います」

 妹さんより質問。「リツキサンを使用しない理由についてもう一度説明してください」

 「現在は体調が万全でないので、使用を控えます。無理に使用すると腫瘍崩壊症候群を発症し、腎不全を起こす可能性があります」

 「また細胞内の電解質であるカリウムイオンが血液中に溶け出し、心不全を起こす恐れもあります。リツキサンによる副作用も当然あります」

 さらに

 「従って、1回目はCHOP療法を半減して行う予定ですが、それでも万一のことが考えられるので、透析の準備もしています。透析を行うようになった場合、その後腎機能が回復しない可能性もあります」

ということで、場合によっては一生人工透析を行わなければならない体になる可能性もあることが分かってきた。さらに、私にとっては聞きたくても聞くことが出来なかった質問が出された。

 「いわゆる生存率についてはどうでしょうか」

 「W期の場合、T期、U期よりも5年生存率は低くなります。Yさんの場合、リンパ腺がはれないという特徴がありますが、この場合は臓器がはれることが多いようです」

 口調は丁寧だが、余命があと何年あるかということにはふれなかった。しかし、総じて説明内容は厳しい。明日をも知れぬ身という言葉が現実のものとなりつつある。

 現状では家族が出来ることも限られている。「どうすればいいのだろうか」という気持ちだけが空回りしている。


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