リンパ腫細胞が消え始めた

 翌7月12日(木)。いつもの時間に病院着。

 仕事、病院、夕食の買い物、帰宅、食事の用意、というローテーションが定着してきた。体も慣れてきた。しかし自分自身の時間が少ないので、ストレスがたまる。好きな小旅行にもまったく行けない。

 現在行っているCycloBEAP療法の計画書では、最短で112日後が終了予定となっている。ということは十月までは病院に釘付けということだ。患者にとっても家族にとっても辛い治療である。

 病室に入る前に主治医に呼び止められ、現状を説明された。

 「現在白血球が860しかなく(通常3000以上)、好中球も599とかなり下がっています。明日の採血検査結果を見て、調子が良さそうならオンコビン、ブレオの治療を始めますが、少ないようなら延期です」

 「ブレオは肺への疾患を誘発する可能性があるので、現在白血球を増やすためノイトロジンを投与しています」

 「皮膚生検の結果は白でしたが、薬剤投与で発赤が消えたところを見ると、やはりその場所にリンパ腫細胞が存在していた可能性が高いと思われます」との説明で、先ずは順調にリンパ腫細胞が消えていることを確認できた。

 病室に入り、主治医の話を要約して伝える。

 「明日以降の薬剤投与で感染症の危険が大きくなる。本人、家族も面会時は常にマスクを着用し、手洗い、うがいをこまめに行う。必ず一度は高熱が出ることを覚悟しなければならない」

 「白血球は限りなくゼロに近づくので、どんな感染症が起きるか予測不能。起きた場合は入院期間が延びることをことを覚悟しなければならない。現在の血液検査結果は正常値に近づいている」

 思いつくままに伝える。Yにとってはショックな話しも含まれているが、事実なのでそのまま伝えた。しかし意外にも、表面上はそれほど落胆した様子はなかった。これからの厳しい治療のときも同様だが、Yは驚くほど我慢強かった。

 一日おきに行われる採血にも文句一つ言わず、常に前向きに治療に取り組む姿勢には頭が下がる。

 Yの治療に当たる看護士さんたちも、逆にYから力を受けたと言っていたので、その精神力の強さに目を見張る思いだ。しかし治療が長引けば、その強靭な神経も折れてしまうかもしれない。やはり家族として、常に寄り添い、見守ることが大事だろう。 


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