主治医の説明 その2 

 主治医の話しは続く。「この診断を確定するためにノイトロジンの投薬をとめて、胸から骨髄細胞を取り検査してみたいと思います。細胞の染色体の検査をすることにより診断が確定します」

 そうか、まだ確定したわけではないのだ。しかしいつになったら正しい診断が行われて、適切な治療が行われるのだろうか。

 「この病名で診断が確定した場合の治療は、輸血、ビタミンD三、ビタミンKの投与、免疫抑制剤の使用を行い体力を回復させます」

 「その後は造血幹細胞移植、抹消血幹細胞、臍帯血幹細胞移植等の3つの方法のいずれかにより、血液細胞を入れ替える必要があります」

 一度は行わないと言っていた移植が再び話題になり、これは相当大きな問題になっているのだなと思わざるを得なくなった。しかし話しの展開が早いので、状況をきちんと認識することが出来ない。

 ようやく悪性リンパ腫の魔の手から逃れることが出来たと思った矢先に、さらに厳しい状況が待っていた。暗いトンネルを抜けて、わずかに灯りが見えてきたと思った瞬間、その先には道がなかった、という最悪の事態だ。さらに説明は続く。

 「移植の場合、ドナーは兄弟が主体となります。HLAの遺伝子型が適合するかどうかを調べます。適合する確率は25%。適合しない場合は骨髄バンクやインターネットで検索します」

 親兄弟で25%なのに、骨髄バンクで見つかるのだろうか、という疑問が当然起きる。

 「親は片方の遺伝子しか持っていませんので、他人はもちろん親も普通は適合しません。ただしドナーとして登録されている方はひじょうに多いので、だいたい見つかります」

さらに

 「移植の場合はドナーも1週間程度の入院が必要になります。今後芽球(Blast)が30%以上になると白血病に分類されます」

 ついに新たな病名が明らかになった。昔から不治の病とされている白血病である。「ついにこんな病名が出てきたか」と呆然とする。しかし現代医学では、かなりの確率で治るとされていることも事実だ。

 「とりあえず診断が確定するまでは週1回程度の輸血が必要になります。しかし何年も続けて輸血は出来ません。体内に鉄分が沈着し、心不全、肝不全等の症状を起こす可能性が高くなるからです」

 輸血をしながらのらりくらりと病気をしのぐ方法がいいのではないかと考えたが、やはりそんなうまい話はないようだ。

 「現状から考えると7日の水曜に血液検査、骨髄検査を行い、血液検査結果で輸血やノイトロジンの投与を行い、週末は退院できる可能性があります」

 これはうれしい。しかし白血病かも、という危険な状態で退院はあり得るのか、という不安も生じる。もしかしたら家に戻れるのもこれが・・・・という病院側の配慮かと、疑り深い私はかんぐっていた。

 「最終診断が確定するのは、水曜から2〜3週間後となります」

 「確定後検査結果によって、緊急に移植が必要な場合は臍帯血を使います。しばらく待てる場合は骨髄バンクを利用する予定です」

 「臍帯血の場合は少量しか移植できないので、生着(細胞がその人間の体になじむこと)するまでに時間がかかることも考慮しなければなりません」

 Yは、同室の患者さんの中に白血病で入院している方もいたので、「そんなことだろうと思っていた」と比較的冷静だ。しかし私は、昨年後半から治療継続の可否を悩んでいたこともあって、後悔と自責の念がないまぜになった複雑な心境だった。


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