白血病の治療へ 

 1月11日(日)。実家で生活しているYから「虫歯が痛い」というメールがきた。当然治療しなければならないのだが、血小板が少ない今の時期、うかつに抜歯をしたりすると血が止まらなくなる恐れがある。

 原因は、久しぶりの自宅で熱い風呂にゆっくりつかったこと。とりあえず冷やして様子を見ながら、主治医と連絡をとるよう伝えた。

 息子を連れてYの実家へ。私は送迎のみで息子は1泊。久しぶりに息子は母親とゆっくり遊ぶ時間が出来た。といってもテレビゲームか、好きなテレビを一緒に見るぐらいか。それでも2人にとっては大切な時間だ。歯痛を除けば体調は悪くない。

 14日(水)。歯医者に行き、歯肉の炎症と診断されたようだ。炎症を抑える薬で、とりあえず様子を見ることになった。だるさもないようで、安心した。

 17日(土)。通院のため、Yの実家へ迎えに行く。9時過ぎ病院着。すぐに採血。採血できる場所が限られてきている。看護師さんも苦労しているが、Y自身の方がかわいそうだ。本人は屈託がないので、なおさら胸に迫るものがある。

 10時採血終了。点滴用の管も入った。病院併設の喫茶店で休憩。10時40分主治医と診療室で話し。先ずはYが現状を説明。

 「歯医者さんからは、歯の神経周りが炎症を起こしていると言われています。蕁麻疹でかゆいところはなくなりました。食事は一人分の半分程度食べられます。時々夕方37度ぐらいの微熱が出ますが朝は平熱です」

と説明をした後に、主治医から厳しい現状の説明。

 「採血結果ですが、1月9日の退院時は白血球が1180でしたが、今日は65720に急増しています。しかもその中の15%は芽球です。血小板も16と低く、すぐに輸血の必要があります」

 白血球のとんでもなく大きな数値に驚いていると、続いて

 「12月29日に行った胸骨のマルクの結果でも、骨髄内に多数の芽球が見つかりました。現状は白血病と考えて間違いないと思います。歯が痛むのも白血球が異常に増加しているからです」

 そして、さらにたたみかけるように、

 「すぐに入院、治療をしないと命に関わります。出来れば今日から入院して欲しいと思います」と言うではないか。

 事態の急展開に、Yも私も気持ちが追いつかない。逡巡している我々を見て、

 「治療を先に伸ばすと後がどんどんきつくなります。場合によっては発熱や骨の痛み、炎症が体全体に広がります。何が起きるか分からない状態になるので、出来る限り治療を早く行わなければなりません」

 だんだん、言葉が脅迫じみてくるが、それほど事は急を要するのだと理解できた。しかしながら目の前にいるYは、歯が痛いだけで体調不良の症状はまったくない。

 体の中で多数の白血球が暴れまわっているとは到底思えない。しかし確かに白血球の増殖率は異常だ。

 とはいうものの、いくらなんでも通院のつもりできたのに、その場で入院というのはあまりに性急だ。そこで入院の準備のために数時間の余裕をもらって、いったん実家に戻ることにした。

 実家で軽く昼食を取り、入院準備。すぐに病院へとってかえす。部屋は再び個室。厳しい治療が行われるための配慮だろうか。病室ですぐに尿検査、酸素濃度、喉の炎症チェック、再び採血。


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