前頁に書いた細胞膜につていての要点をまとめると、
1 細胞膜を構成しているリン脂質は小さな分子(酸素や二酸化炭素のようでう)をある程度自由に通す。
2 こういった膜のことを生物や化学では「半透膜」と呼ぶ
2 水はこの細胞膜(半透膜)内のリン脂質の疎水性部分によってはじかれるので、リン脂質の間を通ることは出来ない
4 リン脂質以外に、細胞膜にはたんぱく質のパイプが多数存在している
5 このパイプを通って水や様々な物質が移動している
と言うようなことです。ではこういった様々な物質が、具体的にどのように運搬、輸送されるのかと言うことが次のテーマですが、その前に半透膜の性質についてまとめます。
半透膜と言うのは、非常に小さな穴が開いている膜というものの総称ですが、よく生物の授業で例示されるのはナメクジの例です。
ナメクジに塩をかけた場合どうなるのか?と言うことですが、ナメクジには人間の皮膚に相当するような細胞が体表面に存在しないため、簡単に言えば内側に水を含んだ細胞膜がそのまま露出していると言えそうです。
そのため、体表面を乾燥させないように、粘液を出しています。ということは粘液を出せるような小さな穴が開いているということです。
そこでその部分に塩をかけると、体内から塩のほうに水分が移動していきます。その結果体内の水分が失われ、縮んでしまうと言うことです。
つまりこれが半透膜の性質を現しているということで、濃度の違う二つの溶液の間に半透膜をはさむと、水に溶けている物質は移動できず、水分子だけが移動するということです。
このとき水は濃度の薄い方から高い方へ移動します。これによって濃度の薄い方が濃くなり、濃い方が薄くなって両者の濃度差が減るということです。
ということは、これを細胞内外への水の出入りに応用すると、細胞内の物質の濃度を高めてあげれば、細胞内に水が自然に取り込まれ、逆に細胞外の物質の濃度を高めてあげれば、細胞から水が失われるということになります。
実際にこの現象は、高校の教科書では「赤血球の溶血」という現象で説明されています。
つまり赤血球を取り出して、血液と同じような濃度の溶液に入れると、赤血球はそのままの形を維持するのですが、濃度の高い溶液に入れると、細胞内から水が染み出し、ナメクジと同じように赤血球は縮んでしまいます。
一方濃度の薄い溶液に入れると赤血球は水を吸収し膨張します。何も入っていない蒸留水の場合は、膨張を続け、最後には細胞膜の一部が裂けてしまいます。これを「溶血」と呼んでいます。
つまり細胞膜は半透膜の性質を持っているということです。
では水以外の物質をどのように輸送しているのか?上にも書いたように小さな分子(酸素や二酸化炭素等)はリン脂質の隙間を通り抜けることが出来ますが、それ以外の物質は、細胞膜のあちこちにあるたんぱく質のパイプによって輸送されます。
このときの輸送方法ですが、ごく自然に行われる受動輸送と、強制的にエネルギーを使って行われる能動輸送の二種類があります。
前者の場合は、溶けている物質の濃度が高い方から低い方にたんぱく質のパイプを通って、濃度差が縮まるように、自然に物質が移動していきます。
しかもこのパイプはそれぞれの物質ごとに異なるパイプが設定されているようで、要するに通過させて良いものと悪いものが選別されると言うことです。
一方能動輸送の方は、必要な物質が近づいたら、それを引き寄せくわえこんで、無理矢理細胞膜を通過させます。こちらはエネルギーが必要です。
よく知られているのは、ナトリウムイオンとカリウムイオンの輸送で、細胞内のナトリウムイオンを排出し、細胞外のカリウムイオンを取り込んでいます。