口の中に送り込まれた食べ物は、歯で咀嚼され、さらにデンプンは唾液中のアミラーゼによって糖へと化学変化を起こしつつ、その他食物中の不要なものは唾液の抗菌、殺菌作用によって駆逐されるということが分かりました。
またその他の栄養分は、唾液とともにお粥状になり、舌によって喉の奥に運搬されます。その後、誰もが無意識の内に飲み込むという作業を行います。
ところがこの飲み込むという作業を必要以上に意識してしまったりすると「嚥下障害」という症状が起きることがあるようです。
もちろん本当に病的なものもあるようですから、症状によってはきちんと医師の診断を受けなくてはいけないと思うのですが、どちらかといえば心因性のものが多いようです。
ただし今は食物の消化吸収について考えているので、ここではこの問題には触れません。ただそういった症状が起きるときがあるという知識を持っているだけでも、不安の軽減に役立つような気がします。
喉の奥から食道に至る途中が咽頭と呼ばれる部分ですが、ここは風邪等でよく炎症を起こす部分です。
逆に言うと、口や鼻から入った雑菌が、この部分に集められ防波堤になっているともいえます。そのため雑菌も多い分、免疫系が活発に活動している部分であるとも言えます。
ところがストレスや疲労がたまると、免疫系の働きが弱くなり、そうするとこのいわゆる喉の部分に貼り付いている風邪等のウイルスが繁殖しやすくなり風邪を引き、喉が痛くなるという現象が起きます。
炎症というのは、免疫系がウイルスと一生懸命戦っている状態で、赤く脹れるので、扁桃腺が脹れたという生じになるわけです。
この咽頭部分を通過した食物は、今度は食道と呼ばれる、縦に長いパイプのような器官に導かれます。
このとき、咽頭と食道の境目近辺に気管との分かれ道があり、この部分に喉頭蓋と呼ばれる弁のような組織があります。
この喉頭蓋は、上部から食物が流れ込んでくると、気管を塞ぐ役割を持っていますが、話しながら食べ物を飲み込んだりすると、この蓋が完璧にしまり切らず、食べ物が気管の方に入りそうになりむせます。
むせるだけならまだ良いのですが、たまたま息を吐ききったところでむせると大変苦しい思いをすることになります。
私はアレルギー性鼻炎で口呼吸をすることが多いのですが、小さいときにたまたま大きく息を吸った瞬間、羽虫のような小さな虫が気管の方に飛び込んだらしく、ものすごい苦しい思いをしました。
たまたま息を吸ったときですから、多少肺に空気が入っていて、その空気で異物を押し出したということですが、息を吸い込もうにも「ヒューヒュー」音がするだけでなかなか吸い込めない状態は、「これやもしかしたら窒息死」と思わせるに充分な苦しさでした。
結局苦しいながらも、激しい咳をして、唾の中に異物と思われる物が出てきて苦しさから開放されました。
出てきたものを見て体長1mmぐらいの黒い羽虫だと分かったわけですが、60年間の生活の中で、かなり苦しい体験をした一コマです。
さてこの喉頭蓋部分を無事に通過した食物は食道に入ります。この食道の長さですが、ウィキペディアには、成人で25〜30cmと書かれています。
食道には消化をするような働きはなく、純粋に食物を喉から胃に送るためだけに存在しています。このときの運動を蠕動運動といいますが、蛇が大きな生物を飲み込んだときに行う運動と似ているのではと思っています。
しかし今回改めて食道の働きをウィキペディアで調べてみて、新しい知識が加わりました。それは食道と言っても、上から下に行くまっすぐなパイプではないということです。
どうやら、咽頭と食道の境目、気管支の後ろ側、横隔膜を通り抜ける部分は特に狭くなることが多いようで、この部分に食物が詰まりやすいようです。
ちなみに横隔膜とは肺の下に位置していて、横隔膜が下がることによって息を吸っています。ということは食道はこの中を突き抜けないと胃に行けないということになります。
この食道を無事通り抜けると、食物は胃の噴門(入り口)に到着します。
なお横隔膜が勝手に動くと、それが刺激になり声帯に影響し「ヒック」という音が発生します。これがしゃっくりの原理です。