ガン細胞が解糖系を利用してクエン酸回路と電子伝達系を使わない理由ですが、正直なところよく分かっていないことも多いようです。ただ使っていないということは事実です。
そこで改めて三つの反応を時系列に置き換えて整理すると
@ 解糖系はブドウ糖を分解してエネルギーを作り出す
A その時に出来た物質(ピルビン酸)を、ミトコンドリアのクエン酸回路が利用して、これに水を反応させてエネルギーを取り出す。
B さらに電子伝達系は、クエン酸回路の中で出来た物質と酸素を反応させて、大量のエネルギーを生み出す。
C 三つの反応がすべて滞りなく行われると、ブドウ糖は二酸化炭素と水になる。
水 | 酸素 | |||||||||||
↓ | ↓ | |||||||||||
ブドウ糖 | → | 解糖系 | → | ピルビン酸 | → | ミトコンドリア | → | クエン酸回路 | → | 電子伝達系 | → | 二酸化炭素 (活性酸素) 水 |
↓ | ↓ | ↓ | ||||||||||
エネルギー | エネルギー | エネルギー |
ということです。この流れを頭の中において、ガン細胞が解糖系しか利用しない理由を調べてみると
@ ガン細胞は増殖のために自分の体(アミノ酸等)を作るための栄養分を確保しなければならない。
A ブドウ糖はその栄養分の最たる物質で、無闇に消費できない。
B クエン酸回路や電子伝達系を通すと、二酸化炭素と水になってしまい、細胞を作る物質として使えない。
ということが一つ考えられるようです。つまりブドウ糖が二酸化炭素と水にまで分解されてしまうと、細胞組織を作る養分がなくなってしまい、分裂するのが大変だ、ということになります。
もう1点ですが、もともとはこちらの話が気になっていて私はミトコンドリアについて調べ始めたわけです。それは
@ ミトコンドリアの中での電子伝達系の反応が低下すると、細胞死(アポトーシス)が起きにくくなるということです。(つまり生まれたばかりのガン細胞が駆逐されないということです)
A この反応にはチトクロムCという物質が関わっているようですが、現段階でまだ私の知識が追いついていません。
また電子伝達系で生まれる活性酸素については、
@ 活性酸素は破壊力が大きい(老化等の一因とも言われています)
A 新たにガン細胞を産み出す可能性がある。
B つまり既存の細胞のDNAを破壊する能力がある。
C 既存の細胞の中にガン細胞があったら、ようやく作ったガン細胞自体のDNAも破壊されてしまう可能性がある。
というわけで、活性酸素の存在は、ある意味「両刃の剣」であるともいえるようで、それだったら利用しないに越したことはない、ということになるようです。
ちなみに活性酸素ですが、通常なら電子伝達系で二酸化炭素になるはずの酸素の一部が、完全に化学反応が進行しない状態になったとき発生する高エネルギー状態の酸素または酸素の化合物のことで、もともと反応の激しい酸素が、さらに激しくなったと考えて良いと思います。
そもそも酸素は空気中で何かと化合して燃えるという激しい反応をします。それを生体内ではなんとか穏やかに燃焼(化学反応)させて、そこから少しずつエネルギーを取り出すという方法が電子伝達系の役目ですが、その過程で時々制御できない反応が起こり、意図しない物質(活性酸素)が生まれてしまうと言うことです。
ただし活性酸素はすべて悪者という物ではな、その破壊力で体内に侵入した細菌類を殺す場合もあるようですから、なければいいというものでもありません。