教員の仕事(2)


OA機器の進化とコンピューターの導入

 この頃のエレクトロニクスの技術革新はものすごい勢いで進み、ワープロはあれよあれよという間に普及。教育現場では、自分の字でプリントを作る先生がどんどん減っていきました。

 さらにコピーや印刷機の機能向上も著しく、ワープロで打った原稿を、自前のプリンターで印刷し、それを大量に印刷し生徒に配布、と言うことが行われるようになってきます。

 しかし、自前のプリンターで印刷した元原稿は、そのまま捨てることもなく、結局来年または引き継ぎのためにファイルに納められていきます。

 その結果、様々な原稿のファイルが机上に積み上がっていきます。部の原稿、委員会の原稿、職員会議の原稿、学年会議の原稿、部活動関係の原稿。さらに他の部や委員会、職員会議資料がこれに加わり、瞬く間に机の上はファイルだらけです。

 さらに、そのファイルの上にワープロが置かれ、教科書や授業道具、配布済みの余ったプリントが載せられますので、もはや教材研究を机上でやろうにも、その場所がありません

 そのようなことが積み重なり、なんだかプリントや書類の作成と整理に追われている合間に授業をする、というような感覚になっていきました。

 書類の山やファイルの山があちこちに出来るのを見て、また業務引継をスムースに行おうとして、県はファイリングシステムなるものを導入。これは県からの文書や、教員が作成した文書を一括管理する棚を作っておこうという考えです。

 その結果、自分で作った原稿は、必要に応じて増し刷りされ各教員間や生徒に配布され、その元原稿は自分で保管しつつ、引き継ぎや資料という名目で、新たにもう1枚保管することになりました。

 一方、最初は単独だったワープロが徐々にコンピューターに取って代わり、コンピューターの能力が進歩する中で、最初は文書作成が主だったものが、やがて成績処理に使われるようになり、さらに入試や進路状況等のデータベースとしての機能も持つようになっていきます。

 私は進路部に所属していたことがありますが、卒業生の受験校、結果、進路先等を膨大な時間をかけて手作業で入力していました。一方新入生の入学時には、住所や連絡先、入試情報等の入力も行われています。これらは当然すべて教員が手作業で行うために、本来の教育活動に裂ける時間がどんどん削られていきます。

 コンピューターを導入すれば、省力化出来る、という幻想が当初はあったと思うのですが、今はコンピューターへの入力とデータの活用に振り回されています。
 OA化による恨み辛みみたいなものを書き続けていますが、要はコンピューター導入によって、本来なら減るはずだった書類がさらに増え、それまでは個々の教員の頭にあったデータベースをコンピューターに入力する作業が増え、さらに県からの連絡や報告がコンピューターのメールを通して行われるようになり、本来の教育という仕事に割ける時間がどんどん削られている、という現状を書きたかっただけです。

 ここ10年ぐらいで、校内のコンピューターはさらにLANで繋がれるようになり、準備室で県からのメールを受けたり、他の部の資料を閲覧、印刷したりすることが出来るようになりました。

 私自身も授業内容や実験内容の教材をコンピューターで保管し、他の先生がそれを見て同じ実験を行うということをやっていましたので、ある意味では便利になりました。

 しかし同時にそれは自分が持っているデータを、できるだけコンピューターに保管すると言う作業が必要なことを意味し、また他の人のデータを使うときも、「ちょっと借りるよ」という声がけもなく、勝手にコンピューターから引き出すという作業になり、教員同士のコミュニケーションは徐々に減っていきました


)
トップページヘ 組織と仕事へ 教員の仕事(3)へ