輸血と骨髄疲弊度

 輸血というのは、型が適合した他人の血液をそのまま体内に入れるのかと思っていましたが、最近は必要な血球だけを補う目的で輸血が行われているように感じました。

 Yの場合の血球不足を振り返って見ると、治療の初期はすべて自力回復ですぐに血球数が増加してきましたので、輸血はまったく必要ありませんでした。

 ところが抗がん剤による化学療法のクールが進むに連れて、血球の自力回復に時間がかかるようになっていきました。

 やがて、一つのクールから次のクールに移る時期になっても、充分に好中球が回復しないことが予想されるようになり、その場合に使われたのがノイトロジン(G−CSF)でした。

 ちなみにノイトロジンを使わずに自力回復を待てば良いじゃないかという考えもあると思いますが、抗がん剤の治療では、細胞周期とクールの周期をうまく調節して、もっとも効果が上がるような周期で抗がん剤を投与することになっているため、出来る限り周期を守りたいというのが病院側の考えです。

 というわけで、ノイトロジンを使わざるを得ないと言うことになるのですが、これも最初の頃は投与されると数日後には標準の数の3倍とか4倍に増えるので、薬剤の効果に驚いたことを覚えています。

 ところが、やがてクールの繰り返しにより、ノイトロジンを投与しても徐々に回復に日数がかかるようになり、投与周期が崩れていきそうになります。

 それでも次のクールに間に合わせないと、抗がん剤の治療効果が薄れると判断された場合は、無理矢理増やす(ノイトロジンの投与量を増やす?)こともありました。

 この場合、「腰が痛くなる」とよく訴えていました。生産活動の衰えている骨髄を叱咤激励して無理矢理血球を増やそうとしているわけですから、その無理が周囲の組織に影響を及ぼして痛みが出るのだと思います。

 しかしそういった痛みを我慢すれば、とりあえず好中球は回復して次の区r-に立ち向かうわけですが、やがて好中球だけでなく赤血球も不足するようになり、こちらは輸血で対応します。

 こういった輸血の流れを見ていても、今考えると骨髄の疲弊度が予測できたなと思えます。

 もちろん病院側も、そういった骨髄の疲弊度を考慮しながら化学療法を行っているのだと思いますが、結局骨髄が疲れきってしまうまで治療を続ければ、たとえ寛解に至っても、自分の免疫球を作り出す能力が衰えていますから、再発の可能性が高くなると思えます。

 かといって、化学療法を途中でやめてしまえば、当然残存するリンパ腫細胞の数は多くなるので、これまた再発の可能性が高くなりそうです。

 このあたりの調整がひじょうに難しいんだろうなと今は思っていますが、輸血に関していえば、ノイトロジン投与、赤血球投与と来て、次に血小板も不足して輸血という時期になったときは、かなり骨髄にダメージが蓄積されていると考えて良さそうです。

 血小板の輸血については、同じ黄色でも輸血製剤の色の濃さもいろいろあるようで、これにはちょっと驚かされました。

 また輸血に当たっては、血液の型が合うように、慎重に選ばれているのだと思いますが、Yの場合は、痒みを感じて、輸血が途中で中止になったこともあります。

 夜にメールを貰ったので、「そんなことがあるのか」とネットで調べてみると、血小板輸血の際にかゆみが生じるのは良くあるようです。

 そのため、だいたいどの患者さんも輸血の前にかゆみ止めを服用するみたいですが、Yの場合どうだったのか確かめていません。

 とすると、当たり前ですが、結局自分自身が生産する血小板が一番自分に適合しているわけで、その意味では元気なときに自分の血液を保管しておく方法もありそうだなと思えます。

 調べて見ると「自己血輸血」と呼ばれているそうですが、これを悪性リンパ腫の場合に応用するなら、最初から造血幹細胞移植を考えた方がよいような気もします。


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