Yの病気に対する意識と症状

 7月1日(日)、転院14日目。午後、母親、私の妹とともに病院へ。元気そうなので安心する。母親もうれしそうだ。

 ちなみにずいぶん悲惨な状況である記述を続けているが、Y自身はひじょうに楽観的で、自分が重病人であるとは思っていない。

 病気そのものの主たる症状がだるさや脱力感であって、痛いとか腫れているとか、苦しいというような症状が一切出ていないからだろう。主治医の深刻な表情と、Yの意識とは大きな隔たりがあるように思える。

 看護士さんが来て酸素濃度を測定。98%で相変わらず私より良好。咳が出ているのが嘘のようだ。血圧も正常で、高血圧の私から見ると羨ましい値だ。

 点滴はいつもの栄養剤が使用されている。今日は薬の切れ目なのか、咳がいつもより多い。足のだるさは変わらないようだが、むくみは消えた。

 翌2日(月)、転院15日目。早くも半月が過ぎた。夕方病院着。尿量が多いようだが、腎臓回復期にそのような症状が出る事があるという説明が、主治医からあった。

 点滴はいつもの栄養剤で、血圧も正常。白血球を増やすためノイトロジンがCVを介して、注射で入れられる。以後化学療法を行うたびに、この薬が活躍する。使いすぎると脊髄に負担が来て腰が痛くなる。

 むくみはどこにも見られなくなった。咳は少し出るが、喉のはれも退いた。若干白目が充血している。左胸のしこり部分は赤味がなくなりつつある。

 抗がん剤が効いていることを初めて実感できた。Yの容態を心配する家族の心境と、病気の様子を分析する医者のような心境が、自分の中に混在している。

 3日(火)、転院16日目。9時頃、主治医より職場に電話がきた。何事かと驚くが、「今後の治療方針について説明したいので、今日病院に来る時間を知らせて欲しい」とのことだった。いつもどおり夕方に行くことを伝える。

 夕方、病室に入り、持参した洗濯物やタオルを備え付けの棚に収納し、飲み水代わりの麦茶を冷蔵庫に入れる。Yはうつらうつらしている。

 Yの書いたメモを見ると、熱は37.7度と36.7度をいったりきたりしている。昼過ぎ白血球増加剤のノイトロジンが注射されている。注射といってもCVの管を介すので、針が直接皮膚に刺さるわけではない。

 Yは寝ていたので、いったん退室し談話室で医師を待つ。病室ではなく談話室が設定されているのがありがたい。プライバシーへの配慮が行き届いている。病室の入り口にも患者の名前は一切掲示されていない。


トップぺージに戻る  第3章 化学療法と副作用へ 新しい治療方針の提案へ