再発の兆し

 再びあの長い入院生活をおくり、抗がん剤の副作用と闘わなければいけないのかと思うと、Yの落胆は底知れないものだったに違いない。

 しかし表向き動揺した様子もなく、しっかりと主治医の話を聞いて頷いていた。退院時に再発の可能性が高いと言われていたが、「やはり再発か」という無念の思いが強い。

 そこで私から肺内視鏡検査の具体的な実施方法について質問した。あらかじめインターネットで調べて、かなり苦しい(気管支に異物が入るのだから当たり前だと思うが)検査ではないかと思っていた。

 答えは、「直径5〜7ミリメートルぐらいの太さのファイバースコープを使い、肺の内部を洗浄した上で、肺組織の一部を採取する検査です。これで再発が確認できるようなら、それにより治療法が確立します。」

 「実際にファイバースコープを入れる段階でむせたりすることがありますので、昼食はなしです。また患者さんに落ち着いて検査を受けてもらうために、精神安定剤、反射制御剤、内服麻薬、キシロカインを処方します」

 「検査時間は約30分で、痛みはないはずですが、苦しさは少し感じるかもしれません。検査終了後は、肺に異物を入れるため、発熱、出血、肺気胸、血圧上昇等の症状が出る事があります。そのため検査後3時間は安静にしてもらいます」

 説明は詳しく分かりやすかったが、話を聞いている限りでは、「じゃあやってみようか」と、気軽に承諾できる検査でもなさそうだ。

 しかも血液検査結果を見ると、これまでになく正常値が並び、Y自身には息苦しいとか、最初の入院時のように喉が渇くとかの症状は一切ないのだ。レントゲンの画像にしたところで、我々素人が見る分には、退院時の画像とほとんど変わらない様に思える。

 さらに患者側としては、再発したということを出来れば認めたくないわけで、苦しそうな検査をあえて行ってまで、再発を確認する必要があるのかと悩んでしまった。

 しかし「どうしようか?」と私がYに問いかけると、「はっきりするなら検査したほうがいいんじゃない」と私よりよほど前向きで決断力のある答えが返ってきた。

 結局その場で検査実施を承諾。4月1日が実施予定日となった。

 ちなみにこの日に行われた血液検査結果は、クレアチニンが相変わらず少し高めだが、その他の数値は見事に正常値に収まっている。この状態で再発していると言われても、感覚的には承伏しがたいものがあることも事実だ。

 とはいうもののPET検査で集積が確認された以上、放置するわけにも行かない。ただ幸いにも、今回は病気の進行がゆっくりしているようなので、前回のように緊急入院ということにはならないようだ。

 しかし遅かれ早かれ再入院は間違いなさそうなので、検査前に再び旅行に出かけた。行き先は富士方面で、2泊3日の予定である。富士山や太平洋を見て、富士市や清水市周辺でおいしい海産物を食べるというのが旅行目的だ。


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