リムジンタクシー

リムジンカウンターの美女の手招きに吸い寄せられる

 さて当面の手続きは一通り終了。次はホテルまでの足の確保だ。交通手段は鉄道、バス、タクシー等があるようだが、事前の調査で初めての旅行ではタクシーが無難だろうと判断していた。また欲を言えばリムジンが高価ではあるが安心感があるとのことだった。

 さてどうするか。「とりあえずタクシーカウンターを捜すべきか」、と思いつつ荷物を持って出口付近に近づくと、ものすごい群集が出口付近に群れている。ほとんどの人がなんらかのプラカードをかざし、こっちだこっちだと手招きしている。

 あの中をかいくぐるのかと思った瞬間、小心なおじさんの心が萎縮してしまった。

 ある程度バンコクの雰囲気を感じ取っていれば、どれだけ人がいようが、冷静にプラカードの内容や人の顔を見ることができただろうが、到着時間が日本時間の11時近くで、頭はすでに半睡眠状態である。はたと足が止まってしまい途方にくれて辺りを見回してしまった。

 とそこで美女がカウンターで手招きしているではないか。吸い寄せられるようにふらふらとそちらに向かうと、そこがリムジンカウンターであった。

 いきなりぺらぺらとタイ語とも英語とも判断できない言葉が投げかけられる。さっぱり分からなかったが、先ほどの喧騒よりましだし、英語が通じそうだったので、思い切って「I want to go to Emerald hotel」と言ってみた。

 もちろんOKの返事があり、この辺からようやく私の気持ちも落ち着いてきて、相手が英語を話していることがわかってきた。ちなみに周囲には私以外には誰もリムジンを利用する客はいなかった。やはり相当高いということだろう。

 そこで「How much to hotel」と尋ねると700Bとの返事。事前の調査と金額はほぼ同じだったので、これで承諾。

 再度ホテル名を確認し、(どうやら通りの名前も含めてラチャダー、エメラルドと伝えた方が分かりが良いようだった)何やら指示を紙に書いて渡され、一方カウンターの電話で運転手さんを呼んでくれた。

 手続きが終えたようだったので紙をもらい、どこに行けばいいのか尋ねると、すぐそばの喧騒の真っ只中に行けという指示だ。

 そんなんで目的のリムジンを見つけることが出来るのか不安になり、思わず本当にあそこかと確認すると、間違いない、そこに行けば運転手が迎えにくるということであった。このあたり英語のやり取りが続いているので、たぶんこんな感じの会話だっただろうという推測が入っている。

 そこまで聞いてカウンターを離れようとすると、突然美女が「money money!」と叫ぶ。どうやら支払いはこのカウンターで済ますようであった。

 システムが分からないことももちろんだが、どうもタイ人の英語は今まで聞いてきたアメリカ人の英語とはかなり違うようだ。ひじょうに聞きとりにくい。

 英語は語尾が聞こえないことが多いのだが、アメリカ人の発音は聞こえないが聞こえているような気がする。しかしタイ人の発音はまったく聞こえないのだ。逆に日本人は語尾まで発音しすぎるような気がする。

 私が宿泊したエメラルドホテルにしても、どうやらエメロンホテルと伝えた方が良いようだし、王宮もグランドパレスだが、タイ人の発音はグランパまでしか聞こえない。これではおじいさんである。

 日本人はジャパニーズだが、もちろん省略しているのかもしれないが、私にはジャパニまでしか聞こえなかった。


リムジンタクシーに乗ってしまった

 それはともかく、渡された紙を持って出口に近づくと中年のおじさんが出迎えの人ごみをかいくぐって私の前に現われ、車の方へ案内してくれた。

 車はトヨタのカムリだった。荷物をトランクに入れ、開けてくれたドアからちょっと偉そうに乗り込む。ほんの少しだけVIP気分を味わえ、気持ちも落ち着いてくる。これで行き先がオリエンタルホテルなら、さらに格好良いはずだが、それはまあしょうがない。

 車は颯爽と出発、と書きたいところだが、いきなり渋滞だ。まだ5mも動いていない。別のページで市内の交通に付いては詳述したいと思うが、空港周辺は車の海だった。

 しかし運転手さんも慣れたもの。私が、事故でも起きるのではないかと冷や冷やして見つめているうちに、鼻先を強引に車列に突っ込み、車線変更も何のそのでジワジワ車を進めていく。

 右も左も前も後ろも車間は1mぐらいしかないような状態で、しかも車線もへったくれもない混沌とした中を、半ば強引に突き進んでいく。これがバンコクでは当たり前らしく、またまたカルチャーショックだ。


トップページヘ バンコク一人旅 エメラルドホテル