タクシーで王宮へ

初のタクシー乗車は、バンコク初心者と見られてぼられる

 JCBプラザでツアーを予約し、さてこれからどうするかと考えた。プラザ内のソファーに座ってガイドブックを取り出しつらつら眺めるが、名案(迷案)は浮かばない。

 となるとやはり最初は定番の王宮観光だろう。というわけでここからどうやって王宮に行くか、これまた慎重に検討した。

 その結果、これはタクシーを利用するしかないという結論に至った。なにせ王宮は最寄の交通機関から隔絶した場所にある。バスでも行けそうだが、とても乗る勇気はない。もちろんJCBでツアーの有無も聞いてみたが、たまたまこの日はない、とのことだった。

 う〜ん、タクシーか。日本にいるときいろいろよからぬ噂をインターネットで読んでいるので、正直億劫だ。値段の交渉は面倒だし、たとえメーターを使ってくれそうでも、いちいち本当に使っているのかどうかをチェックし、使ってない場合は、使うよう指摘しなければならない。気弱なおじさんには辛い。

 しかしこれを敢行しないと、今日は他にどこに行く当てもない。やはりがんばるしかないか、と思いつつ移動を開始した。

 ビルの1階に降り、先ほど地図で調べたように王宮に行く方向の歩道に立ち、タクシーを待った。ところがあれほど見えていた空車のタクシーがちっともやってこない。

 ようやく来たかなと思うと、手前で停まって他の客を乗せたり、急に中央よりの車線に移動したりする。なんじゃこりゃ、と思いつつ、歩道を行ったり来たりする。中には人相の悪い運転手もいて、上げかけた手を慌てて引っ込めたこともあった。

 そうこうするうち、ようやく空車を発見。インターネットやガイドブックで予習したとおりに手を水平よりちょっと下に傾けてみたところ、ちゃんと目の前に停車した。

 助手席のドア
を思い切って開けて、「please go to palace」と叫ぶ。すると運転者君は「OK」と答え、そこで私が「メーターplease」というシナリオだったが、行き先を告げたとたん、いきなり「う〜ん?」と聞き返されてしまった。予定にないことが起きると小心者はうろたえる。慌てて、「palace palace」と叫ぶがちっとも通じない。

 その内運転手の方が面倒になったのか、「分かったから乗れ乗れ」という仕草を見せた。本来ならここでメーター使用を要求するはずが、予定のシナリオが狂ってしまった焦りから、言われるままにフラフラと乗り込んでしまった。

 乗車後改めて「palace」というが通じない。そこで手持ちのガイドブックの地図を取り出し、ここだここだと指差すと、ようやく運転手君納得。大きく頷いて「pale」と言った。

 なるほどバンコクでは、語尾が消えることが多いので「palace」は「pale」だったのだと納得がいった。ちなみに王宮は正しくは「grand palece」なので、もしかしたら「gran pale」というのが一番良かったのかもしれない。

 しかし苦難は続く。行き先がわかったので、ちょっと安心した隙を付かれ、運転主君いきなり「300B」とにこやかな顔でさらっと言う。

 「ええ〜。運転手に先越されちゃったよ。」と思った瞬間、思わずこれまで予習した知識が頭の中を去来し、ここはそのまま応じていはいけない、ともかくもっと安い値段を主張すべきだ、と判断した。

 そこまでは良かったのだが、なにせ唐突だったので、思わず口を付いて出た金額は「200B!」であった。今冷静に考えれば100Bでも高いように思えるが、ともかく言ってしまった。

 相手が交渉に応じると判断したのか、運転手君さらににこやかな顔で「250B」と叫ぶ。「なんだちゃんと値下げするじゃないか」と、おじさんちょっと気を良くして思わず「OK」と答えそうになったが、徐々に冷静さが戻ってきて「too expensive」と言うことが出来た。でついでに降りる仕草もして見せると、「OK、OK、200B」の返事。

 なんとか交渉を乗り切ったが、結果として得られた数字は決して満足のいくものではなったし、ともかく疲れた。

 もっともこの運転手君、その後は実に素直に安全運転で王宮前まで運転してくれた。よくよく考えると300Bと言われた瞬間にメータープリーズと言えば良かったのだ。11時40分。王宮に無事到着


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