初めての昼食

初めての昼食は情けなかった

 ファランポーン駅正面に到着した。さてどんな感じだろうか。駅の中に入ってみる。先ほどまでの多数の欧米人の姿はまったくなく、まさに地元の人の世界であった。

 もっともバックパッカーらしき姿も何人か見受けられた。中央の体育館のような空間にたくさんの椅子が並べられ、ここに列車待ちと思しき人が座っている。

 真っ先にイメージしたファランポーン駅のは昔の上野駅である。あの頃の上野駅を知っている人は、今は皆50代を越えているだろう。広い空間があって、改札口上部に大きな壁画。改札の向こうにはこげ茶色の電車が並んでいるというイメージだ。

 さて肝心の昼食だが、周辺にはお店が10軒ほどあった。しかし食欲をそそる店は皆無だった。

 クーポン食堂
もあったが、利用の仕方がいまいち分からなかったし、料理の写真を見てもあまり食べたくない。困った。しかし腹が減った。

 バンコク初心者としては致し方ない状況であるが、空腹ではその後の行動にも支障が出る。というわけで、結局駅構内に入る横にあったパン屋さんでパンを購入。適当にパンと飲み物を選んだが、合計いくらになったか聞き取れない。

 困った様子を見せると電卓で表示してくれた。43Bであった。内訳はパンが30B。飲み物が13B。日本円では120円弱だ。またしても物価の安さを実感しつつ、20B紙幣を2枚渡し、後は手持ちのコインを見せてその中から選んでもらった。要するに、どのコインが何Bに相当するか分からないのである。


交差点の待ち時間で倒れそうになる

 次にこのパンをどこで食べるか。駅構内の椅子は満席である。駅周辺に食べるところは見あたらない。またまた困った。駅前に出て周辺を見渡すと、ほんの一部ではあるが緑が見えた。大きな交差点を渡らなければならないが、しょうがないのでそこに向かった。

 ところがこの交差点のシステムがまたよくわからない。もともと単純な交差点ではないのでしょうがないかもしれないが、どの方向が青で、歩行者はいつ渡ったらよいのか、さっぱり見当がつかない。

 しかも1回の信号待ち時間がやけに長い。この後いろいろな交差点で感じたのだが、バンコクの交差点の待ち時間は異様に長いと思う。

 普通の場合でも1分から1分半。もっとも長い交差点は私が体験した限りで3分である。車の中でカップラーメンを作ることが出来る。

 これでさらに渋滞しているのだから、運転手もたまらんだろう。その結果生じることは、ちょっとした信号無視である。私が法令を知らないだけかもしれないが、前方が赤でも左折をしてしまう運転手が多いようだ。

 そんなわけで、一向に変わろうとしない信号に郷を煮やして、大半の歩行者は赤信号でも車が来なければどんどん渡ってしまう。

 最初は私も仕事柄躊躇う部分もあったのだが、その内炎天下の日差しで倒れるよりは良いだろうと判断して、地元の人に習ってどんどん渡ることにした。

 結構強気に行かないとダメなんだなということが段々分かってきた。うまくしたもんで、ドライバーの方も、そのような歩行者がいることを前提として運転している節がある。

 着いてみると予想通り椅子があったので、腰掛けてようやく昼食だ。2時を過ぎていた。辺りには何人も人がいるが、いわゆるビジネスマンらしき人はいない。むしろ浮浪者に近いと言った方がよいだろう。夜だったら間違いなく危険な場所だ。

 昼間見ていても、時折目の前をふらふらと歩いていく人の眼はうつろだ。ちょっとばかり危険を感じつつ、いそいで食事を済まし、飲み物を飲んだ。

 飲んだ瞬間、腐っていると感じ思わず吐き出しそうになった。「何だ、こりゃ」と思いつつ慌ててパッケージを見直した。購入したときオレンジの絵が書いてあったので、オレンジジュースだと思いこんでいた。

 しかしパッケージをよく見ると、ヨーグルトオレンジと書かれていた。奇妙な味がするわけだ。納得して飲んだが、その夜はちょっとばかり腹がゆるんだ。この飲み物のせいか、他の食べ物のせいか、それとも疲れのせいかは判断できない。


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