シャングリラホテル内をさまよう

シャングリラホテルはよそ者には冷たかった

 地下鉄からBTSに乗り換え、サバーンタクシン駅へ。駅から出るとすぐ目の前に「シャングリラ・ホテル」が聳えていた。よしそれならここでちょっと高級な料理でもと考えてホテルに入ってみたのだが、肝心のレストランの場所がさっぱり分からない。迷宮のようだ。

 しょうがないので近くにいた従業員に聞いてみた。丁寧に教えてくれているようだが、発音がわかりずらく、結局面倒になって曖昧な返事をして指し示された方角に向かった。しかし辿り付けない。ともかく駅からの奥行きがやけにあるように感じた。

 また従業員は一見丁寧であったが、どこかよそよそしく(こちらがヨレヨレした情けない中年おじさんに見えたのかもしれないが)、いわゆる慇懃無礼な感じだった。

 客をどこか値踏みするような感じで、「いったいあんたはこんなところで何をしているんだ」という蔑視を感じた。エメラルドホテルの従業員とはかなり違う雰囲気だ。プライドが高いと言うことなのか。

 あちこち見て回っているうちにプールサイドにも行き着いたのだが、そこは欧米人ばかりであり、明るい日差しの中でチャオプラヤー川を見下ろす位置にあるプールサイドの雰囲気は、まさにハワイの一流ホテルのそれとまったく同じだ。

 なるほどそういうことだったのか、とプールを見て納得した思いだ。つまり超高級ホテルとしてのプライドがあるのだ。ただしハワイの場合は、ホテルに来る客はすべてフレンドリーに迎えてくれる観光都市としての洗練さが伺える。

 バンコクの場合はまだその域まで達していないということなのだろう。そんなわけで客を差別するように感じるホテルは、こちらからも願い下げなので、これからは絶対に泊まらないホテルのリストに入ってしまった。

 食事にしても、ここは落ち着いて食べることは出来ないなと感じ、違う場所で食べることにした。

 再びホテルを出て船着場に向かったが、途中数軒の屋台風の店があるだけで、いまいち食欲が湧かない。結局船着場の案内所に到着してしまった。まあ今日はゆっくり夜遊び出来る最終日なので、昼食が多少遅くなっても良いだろう、という気持ちもあった。

初めての旅行では利用できないと考えていた船に乗る

 辺りには観光客と思われる人がひしめいている。欧米人、アジア系、日本人と、いろいろだ。もっとも1人でいるのはあまりいない。独り者はたいてい地元の人のようだ。

 船は頻繁に発着しているが、行き先は書かれていないので、どれに乗ればよいか分からない。ガイドブックには旗が立っているものとか書かれているが、想像以上に船の種類が多いし、旗だってどこに立っているのか知らないのだ。

 案内所にお姉さんがいたので、思い切って「ワット・アルン」まで行きたいんだけどと聞いてみた。するとそのままそこで待てばよいとのことだ。ついでにチケットも買いたいというと、船内で買えばよいとのことだった。

 しょうがないのでそのまま近くの椅子に座って待っていると、やがてアナウンスがあり観光客が動き始めた。ただ内容が聞き取れないので、再度お姉さんの所に行き、この船で良いのかと確認すると、良いとのことだったので安心して列に並んだ。

 しばらくして船登場。お世辞にもきれいとはいえないが、まあこんなもんだろう。船の乗り降りに関しては湘南の釣り船で慣れているので、まったく心配していなかった。

 船が桟橋に横付けにされると、一斉に観光客が後尾の乗船口から乗り込む。通常の乗船と違って、船のエンジンはかかったままである。乗船口から前方に向かい数段の階段を下りると座席がある。

 始発駅に近いのか、あまり人は乗っていなかった。しかしすぐに満席になってしまった。私は中央よりちょっと前の左側の席に座った。左の方が川が良く見えると思ったからである。隣には地元の青年と思しき人が座った。降りるのが面倒になった。

 まもなく出航。川の水はお世辞にも美しいとはいえない。ところどころホテイアオイと思われる群落がプカプカ浮いている。

 波を蹴立てて進むので、風向きによってはしぶきが船内に入ってくる。そのためか目の位置近くまでビニールシートがつけられている。それ以外はオープンエアなので(屋根はある)、排気ガスに汚れた都市部に較べると空気が清清しく感じられる。

 この船はいわゆる各駅停車なので、数百mごとに停泊する。案内はまったく無いので、乗客は付近の風景や地図を見たり、桟橋に書かれている番号で下りる場所を判断するしかない。

 しかし降りるのにもたもたしていると、エンジンかけっぱなしなので、乗客が途切れるとすぐに発車してしまう。また桟橋に接岸する時も結構荒っぽいので、衝撃によっては振り落とされそうだ。なかなかスリルのある乗り物だ。


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