微笑みの国は微笑んでくれるか

 タイは「微笑みの国」である、と良く言われます。一方で前のページに書いたように、観光客がちょっと気を抜くと、有り金をすべて失ってしまうというリスクもガイドブックには書かれています。

 どちらが正しいのか?。初めてバンコクに行ったときは、入国審査会場でやたら待たされ、ようやくたどり着いて直面した係官は仏頂面で、私の場合は書類上特に問題なかったので、数分で手続は終了しましたが、およそ「微笑みの国」とは無縁な態度でした。

 その後恐る恐る?空港の両替所に行き、カウンター越しに日本円を渡すと、これもあくまで事務的に為替レートの確認と共に、目にも止まらぬ速さで数えられた紙幣が目の前に差し出され、ここでも微笑みとは無縁。

 薄暗いドンムアン空港内の出口付近にたむろする浅黒く、目玉をギョロつかせた男たちの集団に恐れをなして(単なる出迎えの人たちです)、この時はあえてリムジンを選択。

 当然目玉ギョロギョロの人は微笑みとは無縁でしたが、リムジンのカウンターでは美女が満面の笑みをたたえて迎えてくれ(営業用スマイル?)、ここでようやく微笑みを実感。私の頬も若干緩みました。

 その場でリムジンの運転手さんを紹介され、運転手さんの後について、先ほどの目玉ギョロギョロ集団の間を抜け、車に到着。運転手さんは片言の英語を話す感じでしたが、私の緊張感が伝わったのかホテルまで終始無言。

 こちらはもしかしたらリムジン毎どこかの怪しい地域に連れ込まれ身ぐるみ剥がされるのではという不安が消えず、傍らの手荷物バッグをしっかりと抱え(車の中で抱えていても意味がないのですが)、地図を見ながら車の進行状況を確認するも、夜の道でどこを走っているかまったく不明。

 ただ日本資本の企業の看板が道沿いに立てられているのを見て、日本はここまで進出しているんだという認識を改めて持ちました。

 不安を抱えながら30分ほど経過すると、リムジンは滑るようにホテルエントランスに浸入(エメラルドホテルです)。ドアがさっと開けられ、最敬礼の状態で迎えられたのは良かったのですが、私の方はそのような待遇に慣れていないので、うろたえながら転がるようにリムジンを下車。

 ドアに近づくとその瞬間に人の手でドアが開けられ、フロントロビーへ。フロント前で二人の美女がワイをして、ここで再び「微笑み」に遭遇。フロントマンは丁寧でしたが、その後あらわれた支配人?は日本語ペラペラで、ここでも微笑みに遭遇。

 手続を終えて部屋まで荷物を運んでくれたお兄ちゃんもにこやかに対応してくれ、私の方は「遂に自力でここまでたどり着いたんだ」という満足感の元、初めてのバンこク旅行が始まりました。

 その後前回書いたような思わぬトラブルというか事件に巻きこまれながらも、こちらが毅然と対応すれば(単にはっきりノーというだけですが)それほど危険な街ではないということが徐々に理解でき、さらにこちらがにこやかな顔で対応していれば、どんな場所でも微笑みが帰ってくると言うこと事を体感。

 なるほど、「微笑みの国」というのは、自分自身がある程度余裕をもって「微笑んで」いないと、なかなか感じることは出来ないんだなと、当たり前の事に気がつきました。

 世界中どこへ行っても残念ながらずるがしこいことを考えている人はいますが、その数の何倍も親切にしてくれる人がいることも事実です。

 要はこちらの気持ちの持ちようだと思いますが、日本人の中にも、タイが日本より経済的に劣っているから、タイ人も劣っていると認識している人が少なからずいるようで、そういう人たちは「微笑み」を得られないのかなと感じています。



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